工場経営ではフォローと評価でやる気を引き出す
現場のことを継続的に把握できていますか?
現場のことは工場長にお願いしているから細かいことはわからないなぁ。
たまに現場を巡視するけれど作業者一人一人までは把握できていないなぁ。
作業者一人一人のレベルで現場を把握しておく必要があるだろうか?
経営者によるフォローと評価のためには的確な現場把握が必要です。工夫を重ねて現場の把握に努めるべきです。チームオペレーションを機能させます。
1.工場経営で欠かせないモノ
やる気を引き出す工場運営や工場経営では見える化が欠かせません。
そのためには仕組みが必要です。そして、仕組みを機能させるために現場リーダーを中心としたチームオペレーションを構築します。動機づけをベースにしたチームオペレーションをガンガン機能させてPDCAをグルグル廻します。
ただし、チームオペレーションは経営者が黙って眺めていても機能しません。機能させ続けるために現場へ継続的に供給しなければならないモノがあります。
フォローと評価です。現場の動機づけの源です。「仕組み」「チームオペレーション」「フォローと評価」、どれが抜けてもやる気を引き出す工場運営や工場経営が実現できません。
2.経営者のフォローと評価でやりがいを感じさせる
経営者はすでに現場リーダーを中心としたチームを手にしたと仮定します。
この場合、チームに仕事を任せれば、現場は動き始めます。さらに、判断基準や評価基準が仕組みで見える化されています。したがって現場の自律性も期待できます。
ただし、仕組みを作ってチームオペレーションを構築しただけでは不十分です。仕組みやチームオペレーションを機能させるための“燃料”が必要です。
その“燃料”が「フォローと評価」です。
仕組みを廻すのは現場の作業者です。ですから、仕組みの駆動力である現場の作業者のやる気に火をつけ、継続的なやる気を引き出します。フォローと評価によって、経営者は現場に対して意思表示と情報発信をします。
その結果、現場が次のように実感できればイイ感じです。
- 社長は現場のことを気にしてくれているんだぁ。
- 社長は現場の結果を○○○のように評価しているのかぁ。
この2つです。
まず、自分のことを気にかけてくれているということが心に響きます。そして、自分のことを気にかけてくれる経営者が下した評価への納得感は高いです。
そもそも、現場リーダーや現場は経営者からのコメントを欲しています。なぜなら、自分の業務の有能性や重要性を感じたいからです。これは、大きな動機づけが図られるために不可欠な要素のひとつです。
人は誰でも、以下のような時に大きく動機づけが図られるとされています。
- 自律性や自発性を持って仕事に取り組むとき
- 仕事を通じて、自分の有能さや重要性を感じるとき
この状況で現場は、仕事自体にやりがいを感じます。そして、この次元では仕事そのものの達成感が最高の報酬です。
現場リーダーとチームオペレーションをこうした状態に導きたいわけです。そこへ導くのが、経営者のフォローと評価です。このような現場へは経営者の想いが浸透しやすくなっています。
3.フォローと評価は経営者にしかできない仕事
フォローと評価では、経営者に継続的な現場把握を求めます。現場の現状を正確に把握できてこそ、フォローと評価が可能です。当を得ていないフォローと評価は、かえって悪影響を及ぼします。
経営者はどんなに忙しくても、継続的に現場を把握しなければなりません。この継続的な現場把握は、経営者が絶対にやらねばならない業務です。優先度が高く、経営者が必ずしなければならない仕事は、このフォローと評価です。この業務を経営者に代わってできる人はいないからです。
とはいえ、現実には社外的な営業活動等で多忙で手が回らない経営者が多いです。それでもなお、フォローと評価の重要性に今一度思いを至らせます。そして知恵を絞ります。
ここで、注目すべきは現場で機能している現場リーダーを中心にしたチームオペレーションです。現場リーダーが経営者の代わりを務めます。適切なフォローと評価を目指し、工夫を重ねます。儲かる工場経営では絶対に欠かせないことです。適切なフォローと評価は経営者と現場の関係性を強化してくれます。
会社、工場の一体感です。このような一体感は、大企業にはない中小企業モノづくり工場の強みの一つです。
4.経営者のフォローと評価で中小企業の強みを強化する
下記のグラフは中小企業が考える自社の相対的な強み・弱みです。[2008年12月三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「企業の創意工夫や研究開発等によるイノベーションに関する実態調査」(出典:2009年版中小企業白書)]
赤色一点鎖線を境に上段が弱みで下段が強みと認識された項目です。矢印の方向はそれぞれ弱み、強みの度合いが大きい向きです。
- 強みの最大は「経営者と社員、部門間の一体感・連帯感」
- 弱みの最大は、「規模の経済の発揮」
「経営者と社員、部門間の一体感・連帯感」こそ、中小企業モノづくり工場が活用すべき武器です。経営者が上手く現場へ働きかけることにより、モチベーションはドンドン上がります。中小企業モノづくり工場の現場は、その規模から考えて人に働きかけやすい、という特性があります。この強みを活かさない手はありません。
経営者のフォローと評価によって、間違いなくこの強みが強化されます。そして、経営者の想いを浸透させやすい土壌が醸成されていきます。
※なお、この調査結果では社員のやる気・活力を引き出す仕組みの強みとしての認識度合いは低くなっているようです。社員のやる気・活力を引き出す仕組みは、もっと注目されてもイイのではと思います。
5.経営者からの気にかけていただいた言葉はありがたかった
事情があって、家族の移動も伴った転職をした時のこと。
子供の教育の関係もあり、家族に先行して移動し、仕事場を変えました。その半年後、私を追いかけて家族が移動してきました。そのあたりの事情は転職の際に社長をはじめ会社へは説明していました。
家族の移動がいよいよ来週に、という時期に社長から一言声が掛かりました。
「家族がやっと移動してきて一緒に生活ができるようになってよかった。しっかり、家族の事もサポートしてあげるように」
この一言はうれしかったですね。
日頃、仕事上の会話は当然あったわけですが、このような点にも気にかけてもらっているということが、自然とうれしかったわけです。モチベーションは、下がりようがないです。経営者の言葉は現場の励みになります。
経営者のフォローや評価とは褒め言葉であり、激励の言葉でもあります。会社への信頼感も高まり、やる気に満ちた頼もしい現場が育ちます。
経営の本質は、“他人を通じて、自分の想いを実現することである”。
工場運営のキモが“人に働きかけること”にある以上、「人」のことを研究することも欠かせません。
「フォローと評価」は奥の深い仕事です。経営者ならではの仕事です。
まとめ
作業者一人ひとりのレベルで現場を把握しておく必要があるだろうか?
経営者によるフォローと評価のためには的確な現場把握が必要。
工夫を重ねて現場の把握に努めるべき。
現場リーダーによるチームオペレーションを活用できる。
経営者のフォローと評価で現場のモチベーションを高められる。