工場オペレーションを機能させるため○○も研究する

工場オペレーションを機能させるため○○も研究する

工場オペレーションを機能させるために人間臭い部分にも注意を払い、技術的、工学的な事項とともに「人」も研究対象とする、という話です。

 

1.目指すべき工場オペレーションのために必要なもの

 

現場への一声は現場からの情報収集のみではなく、現場が不安や心配を払拭し、仕事へ集中するのを促すことができます。

新人へもっと一声をかけるべきだったと考えたこと

 

工場オペレーションを最適に機能させるためには、当然、技術的、工学的な土台が前提です。

モノづくりが科学である以上、インプットと「価値の変換器」の質と量に見合ったアウトプットしか生まれません。

アウトプットの質や量を向上させたかったら、インプットと「価値の変換器」の方を変えねばならないという明確なルールがあります。

 

このようにモノづくり現場での工場オペレーションを考える時、工学的なバックグラウンドは絶対に必要です。

 

しかし、目指すべき工場オペレーションを考える時、それだけではダメです。

工学的なバックグラウンドは必要条件ではありますが、十分条件にはなり得ません。

「人」を生かす環境づくりが必要であり、「人」を研究する姿勢の有無が大切になると考えています。

 

現場が不安を持つことなく働き甲斐を感じながら、120%の気力で仕事に邁進できる環境を整備することで、結局は最適な工場オペレーションを機能させることができるのです。

 

2.「人」を研究する姿勢が無ければイケナイ理由

 

現場管理者であった時に、何かと要望を言ってくるベテラン技能員がいました。

現場の職場環境の改善やら、挙句の果てには「給料は上がらないのか」と何かとうるさい。

うるさいと言ってしまっては失礼ながら、そのベテラン社員の口調には「前向き」の雰囲気が感じられず、悪意が感じられるような時もありました。

 

その職場は、転職で就業する機会を得た中小製造企業の現場でした。配属されたばかりなので、状況を探ろうとしていた時期です。

そのベテラン技能員が言っている内容それ自体は、正論であり、いちいちもっともなことではあったですが、そうした正論が中小モノづくり企業で全て実現できるわけでないことも、これまた一般的な事実です。

 

ですから、どこの中小モノづくり企業でも、常にそのあたりは現場と現場リーダー、それと経営者との意思疎通によって、その工場独自の絶妙なバランスを生み出しているものです。

そうした、ある意味では至極当たり前のことを理解できないベテランが、この現場にいるということなのだろうと考えていました。

 

それにしても、なぜ、ベテランがそうした思考になるのだろう?

 

その一方で、管理者として新たに配属されたその現場には「何か」がないとも感じていました。

やれることはやる、すぐにできないことは計画立てる、という意思表示をしつつ、上がってくる要望事項へ対応していく中で分かったことがありました。

 

それまで、その現場では、なかなか現場メンバーの要望事項を実現してくれる機会が少なく、やると言ってもなかなか管理者は行動していなかった、という事情があったようです。

どこの現場でも職場ミーティングのように定例のミーティングが現場主催で行われ、そこで意見を集約して、管理者へ提言するという流れがありますが、そこの職場では、全くそうした体制や仕組みがなかった。

そうしたルールが無いとどうなるか……。

大部分の現場メンバーは黙って我慢をすることになり、声を出せる人が上司に「文句」を言う。つまり、こうしたやり取りでその現場は、長年やってきたということです。

 

現場が自主的にミーティングを開催する訓練もしていない。

現場の意見を集約するスキルを身に着ける機会もない。

当然、現場で「議論」をして、何か一つのことをまとめ上げた経験もない。

モノづくり現場で一見あたりまえにできていることも、実は、長年の現場諸先輩の方々による指導や訓練の賜物であり、こうしたことも学んでいなければ、現場からは「不満」「文句」という形で要望事項が表れてくるということを知りました。

 

人は頭ではなく、心や感情に従って動くと言われます。

ですから、現場に想いを伝えるならば、まずは心や感情に訴えるのが効果的。

共感を得てから理屈で説明する、という手順です。

 

共感という感情的な側面での連携が現場と現場リーダーや管理者との間に無かったとしたら、いくら理屈を説明しても現場に受け入れられにくい。

そうしたことを実感しました。

 

ですから、工場オペレーションを最大限に機能させようとするならば、「人」を研究する姿勢も欠かせないと考えるに至りました。

 

「人」を研究し、やる気を引き出し、立案した計画をやり切れるチームに育成することが重要なのであって、現場と言うのは管理者が何も手を打たなくても自然と成長するものでは決してなく、「意図」がなければ絶対に育たない。

 

コア技術を磨き、付加価値を高める取り組みでは、現場メンバーの自主的、自律的な働きが欠かせません。

独創的、創造的なアイデアはヤラサレ感たっぷりの職場からは絶対に生まれてこないからです。

 

つまり持続するやる気が、現場から引き出されなければ、技術イノベーションが起きる可能性は低いと言わざるを得ません。

技術イノベーションは経営者や管理者のみで達成できるほど簡単なものではないですから。

 

したがって、「人」を研究する唯一最大の目的は、この「やる気」を引き出す

ことであると考えています。

 

3.「やる気」の存在は科学的に証明されている

 

ウェスタンエレクトリック社はかって存在していた米国の電機機器開発・製造企業です。

1881年から1995年まで、AT&Tの製造部門として存在していましたが、その後の合併・吸収により組織は消滅しています。

 

そのウェスタンエレクトリック社のホーソン工場で1924年〜1932年の長期間をかけて、とあるテーマの実験が行われました。

そのテーマとは作業環境問題です。

 

第一次世界大戦が終わって、それまで機械化や計画に基づく管理によって上昇を続けてきた生産性が鈍化するのが認識されていた頃です。

作業環境の改善で生産性が向上するのか、しないのかという問題に決着をつけるための実験でもありました。

 

実験の結果、「照明を明るくすれば能率が上昇する」という仮説が根底から否されました。

 

  • 初め、明るくしたら能率が上がった。
  • もっと明るくしたらさらに上がった。
  • 明るくするにつれて、能率はまだ上がった。
  • ここで、逆に、少し暗くしてみたところ能率は上がった。
  • さらに暗くしたが、まだ能率が上がった。
  • 生産性向上はもはや、照明以外の何ものかの影響であると言える。

 

その他、いくつかの実験が繰り返しなされ、結果として「モラール(士気、やる気)の存在が確認されました。

(出典:IEの基礎 藤田彰久)

 

このように、やる気によって生産性が向上する事実が科学的にも証明されていることに注目したいです。

 

現場の「やる気」の有無は、足元では生産性に、将来的には技術イノベーションに影響を及ぼすということになります。

 

これほど、モノづくり現場の成長と発展のカギを握っているにもかかわらず、意外とおろそかになっていないでしょうか?

「人」の研究が。

つまり、現場から「やる気」を引き出すための工夫が。

 

結局、意図を持って工夫を仕掛けない限り、現場自体もチーム力(議論する力、チームで結論を出す力、提案する力等々)を磨く機会を持つことができず、不満や不平を言葉にするしかない状況に陥ります。

 

工場オペレーションを機能させるために人間臭い部分にも注意を払って技術的、工学的な事項とともに「人」も研究対象としたいです。

現場の組織文化や風土を形成するのに大きく影響します。

 

まとめ。

工場オペレーションを機能させるために人間臭い部分にも注意を払い、技術的、工学的な事項とともに「人」も研究対象とする。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)