小集の文字が辞書にない! では、あるべき小集団活動とは?

小集の文字が辞書にない! では、あるべき小集団活動とは?

1970年代に盛んになった小集団活動は、既に日本で定着しています。

この活動は、過去に日本で経営の効率改善だけでなく、従業員の会社愛・チームワーク強化、人材育成にも大きく貢献しました。しかしその一方で、問題も残しました。

そこで、今回は小集団のあり方について、Gさんが指導したT社の事例をもとにご紹介します。

T社に対するGさんの指導例

T社は、地方では小集団活動が盛んな企業ということで有名です。

しかし、経営効果が出ていません。

一部の方々が熱心な活動をしていますが、全体としては沈滞しています。

 

また、発表会があるのですが、どうやらその発表会のための小集団活動になってしまっており、日常活動とはもはや何も関係ないようでした。

このようなT社の悩みに対し、現状調査をした後、Gさんは次のように説明しました。

「2:6:2の原則というものがあります。

この図をご覧いただければわかると思いますが、あとで招集団の紹介をする都合上、少し説明を加えることにします」

▼2:6:2の原則と研修強化対象者の扱い
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「人が集まり大きな集団になって何かの目標に向かって行動しようとするとき、意欲的に先進的な行動を取る人が20%、傍観的(付和雷同的)な人が60%、批判的な人が20%生まれるという傾向があります。

この意欲的なグル-プが成果をあげ、また経営トップがその方々に注目すると、付和雷同型の60%が意欲的な20%のグループに加わりたい(成功を味わいたい)と考え、80:20の比率に変化する傾向があります。

このようになると、やがて20%は時代遅れになるという危機感から80%に参画し、ゼロとなる。

 

これが2:6:2の原則の要点です。

この原理を応用して、多くの企業ではやる気のム-ドづくりと企業文化の変革だけでなく、当然のこと、改善の推進に大きく足を踏み出してきました。

ところが、一部の企業ではこの原理を知らないために、(歴史と共にグル-プ経営の原則が忘れ去られた結果)奇妙な現象をきたし、小集団活動の効果があがらなくなり、あすなろ集団(あすなろという、明日こそ実と花をつける様子を見せるが、全くそのようなことがない木がある)に留まってしまうことがあります。

 

このような会社では、決まったように発表会や小集団活動を繰り返し、資料もたくさん作っている。

しかし、一番やる気のない人をどのように改善の輪に加えられるかについて、いつまでも悩んでいます(実は、T社はこのような会社でした)。

たしかに仲良しグループを作ることは、小集団活動の導入期には大切なことです。

 

ですが、ある程度進むと効果が出るのが遅くなり、そのうちに活動が停滞してゆく状態になります。

このような状態を、産業界では『提案→低案→停案と推移する』といいます。

 

これに対して、直属上長がマネジメントの課題をハッキリさせ、

“だれかこのテーマをやってくれる人はいないか?”

と招集をかけ、やる気のある人々を集めたり、先に決めた企業の重要課題をメンバーに公開して、問題解決に最適と思われる方を企業側で選定して対策をお願いしたりする方法があります。

これは一種の課題解決型プロジェクト方式で、『招集団』という名がつけられています」

『招集団活動』とは

「この方式では、メンバー設定は目的に応じて行われます。

また、意欲的な方々の集まりなので、短期間にテーマ解決が図れます。

しかも、他のお手本になるような行動を生むケースが多いです。

 

さらに、成功談がまた次の成功を生むので、まさに改善のお手本を作ってくれます。

事実、私が関係している会社で『招集団活動』方式に切り換えたところがありますが、ここでは従来と異なる大きな成果が生まれています。

スポーツには、ごく自然に『招集団活動』のような状況が出来上がっています。

 

例えばある地区に、特別優秀な体型や体力の持ち主ではないけれど、やる気いっぱいで努力を惜しみなく行うという人が成功談をつくると、

“あのスポーツは自分にもできるかもしれない。やってみよう!”とか、

“努力の過程から多くを学べた、道は違うが今やっていることを完貫しよう!”

 

といって、良い行動を真似する人が増えるということが雪崩のように起きる現象も、その一つだといえます。

多くの場合、理論があって行動が起きると考えられているようです。

しかし、スポーツの例からわかるように、製造現場では、実践による成果があって、その後に理論がついてくるといった事例が多いようです。

 

TPS(トヨタ生産方式)にみるJITなどは、まさにこの代表ではないでしょうか?

『成功は成功のもと』という言葉があります。

小さい失敗と反省、それを翻す努力で得た成功の繰り返しで、人と技術や成果が伸びていきます。

 

そういった事例はスポーツで多く見ますが、生産現場の改善も同じです。

『招集団活動』は、まさにこの理論を実践することを狙いとしていますが、このような活動を私は『伸ばせ、伸ばせ主義!』と言ってきました」

と、GさんはT社で『招集団活動』の必要性と意義を紹介したのでした。

小集団と招集団の違いとは

「なお、両者の違いは次の通りです」

小集団

「同」を主体とした活動。

一人でも落ちこぼれないように弱者に気を遣い、強者が弱者を助けるという行動により、全体を仲良しグループにする。

力の弱い人に合わせたテーマ選定で活動する方式。

したがって、一般的にテーマはグループの力量を見て決められる。

招集団

「和」を主体とした活動。

力を持つものが、技術的に正しいと思ったら心ゆくまで意見をぶつけ合う。

反対のない討論や対策検討はむしろ問題だと考え、時には喧嘩をしているように見えるほど意見を出し合うが、相手の意見を尊重し、よく聞き、理解したうえで自分の意見を尽くすことに努力している。

 

そして、一旦納得のいく合意を得たら、全員がその見解や目的・手段を尊重して、実現に努力するという方式。

一般にチャレンジブルなテーマ選定が多い。

和と同を取り間違えることを「混同するわ(和)」というようです。同じように見えても、このふたつは意味が大きく異なります。

コメント

「論より実践」という言葉があります。

産業界におけるほとんどの手法は、理論から生まれたものではありません。

多くの経験を整理した結果、各人が勘と経験で行うよりも勝ると考え、体系化・理論武装をしたあとに産業界に登場したものです。

 

1970年頃、小集団活動は企業が儲けを生むことができる、打ち出の小槌的な扱いをされ、多くのコンサルタントが排出されました。

この中にはGさんのような方もおられたのですが、形を重んじたり、金儲けのビジネス対象と考えたりするコンサルタントや機関も多く存在していました。

「4ヶ月で1テーマ消化、TQCのステップどおり行っていれば、やがて改善効果が出る」

 

として、分厚いテキストを使ったり発表会を行ったりして、賞の獲得というイベントが活性化になるとして、各社を指導していました。

このような方々は、小集団活動を、やがては製造現場から管理部門へ、さらに研究開発部門へと広げました。

 

しかし、アウトプットを決めずに行う活動は、やがて改善の不足を招きました。

また、改善には多くの手法があるのに、QC手法だけを評価したため、目の前にあったやさしいテーマが無くなるにつけ、行き詰まりとなりました。

「改善はテーマ先にありき」です。

 

また、小集団活動活性化のスターティング・ポイントです。

しかし、そのことを理解せずに活動を続けたために、T社のような問題を抱える企業が出てきたでした。

新製品開発部門は、従来からプロジェクト活動を進めてきた部門です。

 

そこに、役に立たない討論方式を持ち込むと、たちまち反発されます。

ほとんどの企業の新製品開発部門の方々が小集団活動を拒絶したことは、日本産業の歴史的経過に残る有名な話です。

JMA推奨「経営直結型小集団活動」とは

このようなことも関与して、JMAでは下に示した図を「経営直結型小集団活動」という形で産業界に推奨したことがありました。

 

要点は、過去の反省から、

①テーマの広がり

テーマは経営参画型にするため、企業側であげ、その中から選択する。

 

②活動の広がり

テーマや企業が抱える問題解決に最も有効な手法とメンバーを職位・職制~会社間の壁を越えても選定する。

 

この条件のもとで、

③自主性の広がり

最高効率で課題解決を図るため、リーダー一任の形で運営を任せ、早期、かつ効果的な運営を図るためプロジェクト方式を用いる

というものでした(これは数十社の方々が2年以上もかけて整理し、産業界に提唱したものです)。

 

そこで、小集団活動やボトムアップ改善を経営の中核において体質改善を図る企業には、活動のチェックとして、またご参考願いたい要件として、ここにG氏の指導と共に、JMAの活動を紹介させていただきます。

▼’97 JMA 21世紀へ向けた多様な小集団活動への提言の要点
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昭和45年から平成2年まで、日立金属㈱にて、全社CIM構築、各工場レイアウト新設・改善プロジェクトリーダー、新製品開発パテントMAP手法開発に従事。うち3年は米国AAP St-Mary社に赴任する。平成2年、一般社団法人日本能率協会専任講師、TP賞審査委員を担当を歴任する。(有)QCD革新研究所を開設して活動(2016年有限会社はクローズ、業務はそのままQCD革新研究所へ移行)。 http://www.qcd.jp/