小規模企業は小粒でピリリと辛い事業で戦う
貴社では、小粒でもピリリと辛い隙間を狙った事業展開を目指していますか?
1.自社の立ち位置を全員で理解する
市場や業界における、自社製品の「現在」の立ち位置。
これは、事業の将来を考えるうえで欠かせません。
考える基準がなければ、「将来」を設定できないからです。
自社の立ち位置を客観視します。
そして、自社の立ち位置を全員で理解することは、知恵を絞ろうという動機付けにつながります。
自社が客観視されれば、より望ましい姿を描きたくなるものです。
比べられれば、よりよくしたくなります。
現場は、誰でも自分の職場を良くしたいと考えています。
したがって、現場へも、しっかりと自社製品の市場や業界での位置付けを伝えたいです。
そうして、現場からのアイデア出しを促します。
こうして、自社の立ち位置を全員で理解すると、将来に目指すべき状態を、設定しやすくなるのです。
2.小粒でピリリと辛い事業展開を目指す
企業として何ができるかを左右するのは、ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源です。
経営資源の差が企業間競争への対応のあり方を決定します。
その結果として、市場競争上の順位がつけられます。
そして、市場で競争を繰り広げている各企業は、4つの競争地位に分けられます。
経営資源の規模と質の相対的な比較で分類されるのです。
(出典:新経営戦略論 寺本義也、岩崎尚人編)
つまり、
・経営資源の規模が大きい、小さい
・経営資源の質が高い、低い
これらの組み合わせです。
中小製造業の経営資源の規模は、当然、”小さい”です。
したがって、中小製造業の競争地位を決めるのは、経営資源の質の高低です。
例えば、経営資源の質が高い企業は、仕様や価格の決定権を有する事業を展開できます。
自社ブランドを持ち、直接に市場と向き合っている製造企業です。
モノづくりに加えて、”売る”行為も自らコントロールしながら事業を進める能力を有しています。
一方で、経営資源の質が低い企業は、仕様や価格の決定権を全く有しない事業に甘んじることになります。
例えば。
親会社の指示通りに事業を展開している下請型の現場です。
自社の好調、不調は親会社次第であり、自社の独自性が少ないです。
生産3要素、品質、コスト、納期に直結する仕様、価格、納期の決定権の有無。
経営資源の質の高低は、この決定権の有無で判断できるのです。
規模の大小は、経営資源の質に無関係です。
小さくても、経営資源の質が高い企業は、小粒でピリリと辛い、収益率が高い事業を展開できます。
一方、規模が小さくて、経営資源の質が低い企業は、親企業の顔色を窺いながら、薄利多売の事業展開になります。
規模を追わない中小の現場は、小粒でピリリと辛い事業展開を目指すのです。
3.沖縄のトイファクトリーインターナショナル
トイファクトリーインターナショナルはキャンピングカーの製造・販売をしています。
高規格特殊車両と部品の製造および国内・海外市場向け販売を事業としています。
本社および工場の所在地は沖縄県うるま市です。
特別自由貿易地域(現名称:国際物流拠点産業集積地域)に立地しています。
同社のHPには、事業内容が下記のように説明されています。
○ソリューションパッケージの開発
海外市場向け 現地対応型の特殊用途車両開発。
○付加価値製品の開発
環境製品(部品)の開発。
特装車両架装ベース商品の提案。
○車両開発ビジネス
キャンピングカー受託開発・製造。
特殊用途車両 製造販売。
快適性とエコを両立させたトイファクトリー社のキャンピングカーは、高い品質とデザインで人気を博しています。
キャンパー専門誌の「読者が選ぶベストキャンパー賞」を2年連続で受賞しました。
同社の資本金は900万円、従業員は14人、2015年9月期売上高1.5億円です。
小規模企業に分類されます。
親会社のトイファクトリーは、岐阜県が拠点ですが、海外展開を念頭に沖縄で製造を始めました。
2012年にトイファクトリーインターナショナルを分社化しています。
同社は、まさに小粒でピリリと辛い事業を展開している企業です。
このトイファクトリーインターナショナルは発展途上国へ医療回診車の輸出を始めました。
2016年4月、ケニア赤十字に初めて納入しています。
キャンピングカーメーカーが、医療向け車両を開発するきかっけとなったのは東日本大震災です。
避難生活を経験した顧客の声が、考えるきっかけとなりました。
「プライバシーが確保できるキャンピングカーが役に立った」との声です。
そこで、もっと有効な活用方法はないかと考えた末の答えのひとつが医療回診車でした。
国内では法規制が厳しかったという事情もあって、海外に目を向けたとのこと。
ケニア赤十字と医療回診車の実証事件で協力する覚書を2015年に結びました。
アフリカでは、粗悪な車両が出回っているため、日本車への関心が高いようです。
そして、「とにかく丈夫に走れるように」という現地の要望も直接聞くこともできました。
そこで、同社では、現地のニーズを踏まえ、悪路走行に強い車を製造しました。
さらに、トイファクトリーインターナショナルはトヨタの関連会社と提携しています。
その結果、トヨタの海外販売網と保守サービスを活用することが可能となりました。
社長の藤井昭文氏は「現場の声を反映した車を造りたい」と意気込んでいます。
(出典:日本経済新聞2106年5月23日)
小粒でピリリと辛い企業が、ますますピリリと辛くなります。
4.隙間市場で事業を展開するのに規模は不要
トイファクトリー社全体の従業員は30人、売上高は15億円です。
小粒でピリリと辛く隙間市場で事業展開をするために必要なのは独自性です。
規模は不要であることを同社は証明しています。
足りないものは、外部から手に入れればいいのです。
海外での販売網と保守サービスシステムをトヨタとの提携で手に入れています。
アフリカでの医療支援というコンセプトにトヨタも共感した結果と推測されます。
事業への想いに対する共感が得られれば、協力者は現れるということです。
自社の価値を社会に役立てたいとの想いがあるからこそ実現できたことです。
また自社のコア技術から創出できる新たな市場、顧客を考えことも必要なことです。
同社のコア技術は、キャンピングカーを始め”特殊”車両を製造できること。
顧客や市場の声に耳を傾けて、コア技術を発揮できるフィールドを探します。
同社にとってのひとつの答えが、海外向け医療回診車でした。
国内法規制を乗り越えて、海外における潜在的なニーズを発掘しました。
同社の事例から、下記がわかります。
・外部の声も生かし、コア技術で提供できる付加価値を考え続ける。
→潜在的なニーズが見えてくる。
・想いを持って事業展開する。
→共感者からの協力を得られる。
規模が小さくても、独自性を追求していくのだという経営者の考えが重要なのです。
経営者の想いを共有できれば、経営資源の質は間違いなく高まっていきます。
動機づけの有無の差です。
質が高まれば、ますます、利益率の高い「尖った事業」を展開することが可能です。
お金を生み出す、好循環が生まれます。
小粒で、ピリリと辛い隙間を狙った事業展開を目指しませんか?
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