大企業と中小企業の“働きがい”どう違う? 製造業エンジニア満足度調査
エンジニアのためのキャリア応援マガジン「fabcross for エンジニア」が、製造業界の大企業・中小企業(従業員数300人以下)で働く研究・設計・開発系エンジニア200人ずつを対象に、「企業規模と働きがい」に関するアンケート調査を行いました。
一般的に「大企業の方が福利厚生はしっかりしている」「中小企業なら広い範囲の仕事を扱えて働きがいを感じられる」などといわれていますが、果たしてその実情とは?
大企業、中小企業で働くメリットについて、それぞれの環境で働くエンジニアたちがどのように感じているのかが、アンケートによって明らかになりました。
意外な結果? それぞれの企業・職場満足度
勤務中の企業や職場環境について、項目別に満足度を5点満点で回答。その結果、「総合評価」の満足度は大企業が3.12点、中小企業が3.01点。僅差ですが、大企業の方が満足度は高いようです。
中小企業が勝っていた項目は「仕事のやりがい」のみ
中小企業と大企業を比べてみると、中小企業が勝っていた項目は「仕事のやりがい」(0.08点差)のみ。
また、大企業と比べ、中小企業で働くエンジニアの間で特に満足度の低かった項目は、「研修制度」(0.97点差)、「福利厚生」(0.88点差)、「会社のブランド力」(0.86点差)でした。
企業の規模にかかわらず「先進性・専門性」「環境」を重視
アンケートでは、自分の働く企業・職場で「一番満足しているところ」と「一番不満を持っているところ」を自由回答形式で答えてもらったそうです。数字だけではわからない、エンジニアの素直な思いが現れた面白い結果になっています。
まずは大企業、中小企業の違いにかかわらず、エンジニアが共通で満足している点を見てみましょう。
大企業・中小企業共通:一番満足していること
業務で扱う技術の先進性・専門性
<大企業>
- ある分野を長いことまかされている。専門性を活かせる
- 研究的要素が多く興味深い
- 先端の開発にかかわっている
<中小企業>
- ○○用機器の開発で他社では作れないものを開発している
- その業界の最先端の製品や技術に関わる事が出来る
- 最先端の技術に接していられ、それに貢献できている
- 特殊な分野なので知られていないが、世間では必須なところなので、そこで仕事ができることは喜ばしい
業務に集中できる環境
<大企業>
- ソフトウエアエンジニアとして比較的自由に仕事ができている
- ノルマでがんじがらめではなく、比較的自由に仕事できる
- 個人の裁量に任されているところが多い
- 自分のペースで仕事ができる
<中小企業>
- 不毛な仕事が無い
- 比較的自由に設計業務に集中出来る
- 一人で仕事に打ち込める環境である
「仕事の規模が大きい」「ワークライフバランスが取りやすい」反面、「スピードが遅い」「社内が硬直化」する大企業
続いて大企業、中小企業だからこそ感じているそれぞれの満足・不満についてまとめました。
まずは大企業です。関わる事業の大きさや多少のチャレンジに寛容な部分は、まさに大企業ならでは。冒頭でも触れたとおり、やはり福利厚生の充実に満足している人も多いようですね。
一方で、規模が大きいからこそ生じる会社内のトラブルや融通の利かなさは大企業で働く人の持つ共通の悩みのようです。
大企業:一番満足していること
仕事の影響力の大きさ
- インフラを作り世界中に貢献する
- マーケットが全世界
- 仕事の規模が大きい
- 世界の仲間と働いてるダイナミズム
- 社会生活に大きく貢献する業務内容
- 自分の書いたコードが中に入っている製品が、実際にお店に並ぶ
ワークライフバランスがいい
- ワークライフバランスが取りやすい
- サービス残業の徹底規制などコンプライアンス最優先で管理しているところ
- 余暇と負荷のバランスがいい
- 休みが比較的取りやすい
チャレンジできる
- 常に自己の成長につながる挑戦的な業務
- 新しいことにチャレンジ出来る
- 多少ムチャなチャレンジでもやらせてくれる。また、失敗にたいしても寛容
給料・福利厚生がいい
- 優秀な技術者が揃っており、給与水準も悪くはない
- 会社の業績が上がらないのに給料が高い
- 福利厚生、育児就業が出来る
- 福利厚生が充実している
大企業:一番不満を持っていること
経営層への不信
- トップの権限が強すぎて、トップの意向で様々な方向性が決まってしまう
- 会社の上層部の現場への対応が非常識
- 技術の会社のはずなのに、事務屋が実権を握っている
- 経営がダメ。老害をまき散らす人間多い。潰れる同僚が多い
- 経営者、得意先の言いなりになっている
スピードが遅い
- 会社自体の新しいことをやるまでのスピードが遅い
- 開発スピードが遅いこと
- 新技術の潮流に対する対応の鈍さ
組織の巨大化に伴う弊害
- 色々なことが、開発・設計部門だよりで、労働負荷が部門ごとに大きな偏りがある
- 細かな規則が多い
- 制約が多くてやりたいように出来ない
- 組織の壁が高い。決裁に時間がかかる
仕事内容への不満
- 自分のやりたい仕事ではない
- 新しいことへの挑戦がやりにくくなった
- 派遣会社ではないのに、派遣会社の様な仕事しかない。やりがいが持てない業務環境
- 社内が硬直化しており、高いレベルの仕事が回ってこない。組織風土が挑戦的でなく過去の延長線上の仕事に満足している人が多い。そのため、成長欲求を仕事で満たすことができない。自己の成長も感じられない
「他社では作れないものを開発」「自分で設計から完成まで」できる一方、「業務負担が多い」「評価に偏りがある」中小企業
続いて中小企業で働くエンジニアの満足・不満を見てみましょう。
大企業に比べ、あらゆる面で柔軟に対応をしてもらえる点に、中小企業ではやりがいを見出しているようです。
また、一人一人の裁量権が大きいからこそ、自分がいないと仕事が進まないというメリットとデメリットが両立している部分もあるようです。
中小企業:一番満足していること
顧客からのフィードバックが得られる
- 現場(使用者)の意見を聞き、早期に製品に反映出来る
- 顧客が喜んでくれる
業務範囲が広い
- 自分で設計から完成まで出来る
- 広く浅くいろいろ出来る
裁量・影響力が大きい
- 仕事の手順が多少なりとも自分で考えて行動できる
- 仕事の進め方などにある程度の自由がある
- 自分の意見が反映され、評価もされ、必要な設備を購入してくれる
- 自分の裁量で物事を決めれる
自宅から通いやすい
- 自宅に近く、通勤時間が短い
- 家から近くで自分の満足できる業種で仕事ができる
柔軟な対応
- 勤務形態を生活に合わせて変えてくれた
- 就業時間の融通が利く
- 年齢にかかわらず仕事が遂行できる
職場の人間関係
- 人間関係が温和である
- 人間関係が複雑で無い
- 人間関係でのトラブルがない
中小企業:一番不満を持っていること
業務負担が大きい
- ひとり当たりの業務負担が多い
- ほぼ全て自身がやらないと物事が進まないこと
- 個人で仕事を請け負っているかのように自分以外その業務をやらないしやれない
人事評価に不満
- 評価に偏りがある
- やりがいがないのと評価制度が不満
- 評価制度が最低
若手が育たない
- 若手の教育が甘い
- 若手の人材が育たない
以上、大企業と中小企業の共通点・相違点を見てきましたが、一般的に思われているイメージとの差異はそうなかったように感じます。
自分の働く企業にも通じるものがあったでしょうか? 満足している部分はそのままに、社内で感じる不満はうまく解消していければ良いですね。
調査概要
- 調査方法:ネットリサーチ
- 期間:2016年11月9日~16日
- 対象:全国のメーカーで働く研究・設計・開発系の業務に就くエンジニアのうち、中小企業(従業員数300人以下)で働く200名と、大企業(従業員数1001人以上)で働く200名