大企業が開放する特許は、技術の宝庫である

大企業が開放する特許は、技術の宝庫である

未利用特許は75万件

大企業では日夜研究開発が行われています。

その中で特許になりそうな基礎技術や応用技術について特許を取っていきます。

しかし、国内特許約160万件のうち約半数の約75万件の特許が未利用の大企業の特許であるといわれています。

 

開放特許に興味を持った時、初めに懸念するのが「未利用である特許は大企業がさじを投げた技術であり、中小企業にとっても使いえないものではないか」ということです。

そして、大企業が使えないと判断したものであるため価値が低いのではないかと思い、使用を躊躇してしまう人もいるでしょう。

しかし、大企業が使えないと判断した未利用の特許の価値が低く、使えないというのは大きな間違いです。

 

大企業が特許を利用しない大きな理由としては、市場規模が10億円に満たない小さなものだからということがよく言われています。

大企業では市場規模がある水準に満たない技術については、いくら技術が優れていても実施しないことがあるのです。

開放特許で有名な富士通の事例

開放特許には、このような市場規模が数億円や数千万円の技術が含まれています。

こうした技術は中小企業にとっては宝の山であることがあるのです。

さらに、大企業では基礎技術や応用技術について様々な分野のものについて研究しているため汎用性が高く様々な分野に応用できるような開放特許も数多くあるのです。

 

例えば、「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)でも紹介されていた富士通株式会社のチタンアパタイト光触媒の事例があります。

チタンアパタイト光触媒は、菌類を不活性化させるため抗菌や防臭の効果があります。

そのチタンアパタイト光触媒を糸に練りこんで服を作ることで抗菌性及び防臭に優れた服ができるそうです。他には、チタンアパタイト光触媒をマスクに使って抗菌作用を高めた商品も出ています。

 

このチタンアパタイト光触媒の技術は基礎技術であり、中小企業が始めから研究開発をしようとした場合には莫大な費用と時間がかかったことでしょう。

 

出典:『大企業が開放する特許は、技術の宝庫である』開発NEXT


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。