変な図面

変な図面

今回は、当社に支給いただいた図面のことです。

お断りしておきますが、特定の会社のことを言っているのではなく、一般的に言えることです。

まず、下の図面を見てください。

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おわかりだと思いますが、この品物の場合は、縦のテンプレートではなく、横のテンプレートが適切です。

加工するときは、下のように向けざるを得ません。

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しかし、φ17、φ20、などが逆になってしまいます。

何か不自然で、見づらいですね。

通常加工者は、加工が完成した品物を機械に取り付けた状態のことをイメージして、工程を進めて行きます。

 

加工を経験したことのある方なら、このような図面は書きません。

加工者にとって、見づらい(解りづらい)ということは、不良率も上がるということを意味します。事前に不良を減らす配慮にも欠けてます。

また以前なら、このような図面を社外に出すことは、会社の恥とされてきました。

 

しかし今日では、このような図面も珍しくありません。

教育がなされていない、というか、全くこの先の製造業は、どうなるのだろうと思ってしまいます。

大げさだと思われる方は、それはそれで一つの考え方だと思います。

 

私は、ある程度のことは、身につけた後に、世に出るべきだと思います(社内でしっかり教育してから、社外の方と接する)。

昔で言う修行の期間でしょうか。

やはり極度な分業化と、CADやNCその他の、いわゆるハイテク品の出現による、マイナス面だと私は思います。

 

自分の持ち場以外の知識に欠け、仕事全体を見れない人材が増えていると、他業種の方のお話でも同じようなことを言っておられました。

加工でも、自分の加工の後に、何工程かある場合、後の工程のことも考えて加工すべき所を、自分の加工がやりやすいようにとだけ考えて仕事(?)をしてしまっている事例がよくあります。

発注側の方が、加工に詳しくない場合、なぜうまくいかないのか解らず、当社に持ち込まれることが、何例かありました。

 

このようなことを考えると、発注権限者の方は、単に相見積もりを取って、条件の良い方に発注するだけではなく、昔のように全体を見て、発注業者を選択できる技量が必要ではないでしょうか。

昔は発注権限の部署には必ず現場経験豊富な方がいらっしゃいましたので、すぐに見破れたのですが、このあたりもそろそろ表面化してくることと思います。

本当の意味での技術伝承とは、単に、「設計ができる」「加工ができる」「仕上げ・組み立てができる」というだけではなく、総合的な目で技術を身につける事ではないでしょうか。

 

以前、私が書いたブログ記事です。参考にしてください。

~基本を大切にした技術伝承~ 汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/