基礎データの重要性|元トヨタマンの目

基礎データの重要性|元トヨタマンの目

私がトヨタへ入社した時、工場では作業工数の実績を電算機で集計していた。

そしてその工数データは、同時に集計される詳細な生産数実績データとぶつけられて「生産能率」という指標にして現場管理に活用されていた。

トヨタ生産方式とは、「生産計画(平準化)」「工程づくり」「要員オペレーション」「生産オペレーション」「改善活動評価体制(生産能率・変動費予算管理)」から構成されている。

この生産能率管理はトヨタ生産方式の重要な構成部分であるため、これに必要な資料の一部である実績工数の把握には多大な投資をしている。

 

この中国河北省のクライアントの工場は、作業工数の実績把握はされていなかった。

そこで現場にどの製品を作るのにどれだけの工数を投入したかが分かる日報の提出をお願いした。

基礎データの重要性_01

そして毎日提出される日報の集計を、改善班の喬君にお願いした。

喬君はこの作業を精力的にやってくれた。

しかし現場は、今までやっていなかった記録ということをさせられるという被害者意識がいっぱいで、喬君は当り散らされたようだ。

喬君はそれに耐えて、現場に提出を督促し、インプット作業をやり続けた。

そうすると、そのデータを経理部や総務部が非常に重宝がってくれて、「ほしい、ほしい」と言ってくるようになったそうだ。

やはりこのような基礎データがないと、生産計画、要員計画、損益予想などのもろもろの仕事がきちっとできないのだ。

そして結局、システム部が乗り出してきて、システム化して現場記入も集計も楽にできるようにすることになった。

 

トヨタの先人たちはいち早くこの重要性に気づき、まだ大型電算機の時代に巨額の投資をしてシステム化してしまった。

具体的にいえば、すべての工程は、生産の増減に応じて、要員を増減させて稼働できるように作られている。

そして生産の増減は月次単位で行なわれる。

そこで、毎月の生産量の予想値から、各工程の必要人員を算出し、各工程に要員の準備をさせなかればならなかった。

このような要請から、工数実績という基礎データは、完璧にとらなければならなかったわけだ。

 

私もクライアントと一緒に、トヨタの歩んで来た道を体験することができる。

またここで体験したことは、他の企業にも横展できる。

この仕事は非常におもしろい。

 

基礎データの重要性_02
会議システム化への打ち合わせ


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。