地味だけどしっかりと継続対応したい○○点検管理

地味だけどしっかりと継続対応したい○○点検管理

設備の問題を未然に防ぐために点検項目を全て洗い出し、仕組みを構築する、という話です。

 

・その設備が連続稼働する状況を維持できている

・「コト」を反映した情報を安定して転写する状況を維持できている

の2つの観点から正常に稼働している状態を定義します。

 

点検項目には抜けがないように設備メーカーも巻き込んで洗い出しします。

1.工場運営、工場経営で欠かせない2つの視点

工場運営、工場経営で欠かせない視点が2つありました。

1)問題が発生するのは、現時点の“仕組み”が最適ではないからである。

原因は人ではなく、仕事のやり方にある。

 

2)問題は仕組みを通じて未然に防ぐものである。

問題は発生してから対応するモノではなく、防止するモノ。

現場の管理者の経験を積んでいくうちに信念となった考え方です。

 

よほどの怠慢が担当者になかったのならば、問題が起きたのは仕組みであると考えます。

担当者個人を責めても、建設的な解決策は全く出てきません。

やる気を失った現場の従業員をひとり増やすだけで、何一つ得はないです。

 

担当者個人を責めた上司は満足したかもしれませんが、それでどうした? という感じです。

経営者としては、現場のあらゆる活動が工場や現場に情報的経営資源として蓄積されるような仕組みの構築に力を注ぐべきです。

個人的な満足のために部下を責めている上司がいたら、そう指導すべき。

 

それだけ、仕組みづくりが大切だということです。

2.設備の問題を未然に防ぐための点検項目

品質、コスト、納期、安全、製造等、未然に防ぎたい問題があらゆる分野に存在します。

当然、優劣はないのですが、設備の問題は可能な限り未然に防ぐという方針で優先的に取り組むのが全体最適の視点から判断しても理にかないます。

設備の問題は稼働率の低下、生産性の低下、品質の低下、様々な問題へ波及するからです。

 

そもそも、製造現場は日々設備が動いてなんぼのものです。

設備の問題で生産ラインが停止しようものなら、生産計画対比で遅れが発生し、納期遅れにならないかどうか、管理者はヒヤヒヤものです。

そうした状況は絶対に避けたいです。

 

また、設備の問題で仕様から外れた製品が大量に発生し、選別で良品不適合品の見極め、人海戦術でなんとかのりきるような事態も避けたいです。

社外へ不適合品が流出していないかどうか、管理者はドキドキものです。

工場にとっての生産設備はコア技術を生み出す大元であり、これが正常に稼働しないことには話が始まりません。

 

ということで、設備、特に生産設備の故障やトラブルが発生する前に、それらを未然に防ぐことに最大限エネルギーを注ぐべきであり、そうした対応を可能にする仕組みづくりを進めるべきです。

仕組みができあがれば、あとは仕組みに任せ、状況に応じて仕組みに修正を加えます。

 

さて、設備点検管理の仕組みを検討する場合、その設備が正常に稼働している状態を定義するところから始めます。

正常に稼働している状態とは何か明確に定義します。

2つの観点から考えます。

 

・その設備が連続稼働する状況を維持できている

・「コト」を反映した情報を安定して転写する状況を維持できている

 

例えば、前者はコンベヤチェーン駆動用モーターの過負荷等で、連続稼働させるとモーターがやられてしまうような事態が起きない状況です。

また、後者は、仕様を反映した設定になっていない、あるいは一旦設定してもそれを維持できない事態が起きない状況です。

特に後者は、稼働自体は可能なので、知らないうちに不適合品を大量に発生させる事態に陥る可能性があります。

 

そして、上記の2つに関係する設備項目を全て洗い出します。

前者はしっかり対応できる場合は多いのですが、後者は抜けが発生する場合が見られます。

設備メーカーの方が、設備を使う側の事情や状況を全て把握していないので、重点的に管理する点検項目に抜けが発生することがあります。

 

ですから、設備を使う側としては、設備メーカーにはしつこく、その設備を使用する目的、狙い、期待する性能について説明し、点検項目の情報を引き出すことも大切です。

設備メーカーに丸投げで、言われたとおりの点検しかしていない場合、その工場にとって重要な項目の点検が抜け、問題が発生してから初めて気が付いたということが発生します。

こうした事態は避けたいです。

3.設備の問題を未然に防ぐための仕組み

点検項目が全て洗い出されたら点検表の作成です。

通常、点検間隔によって、

 

・日常点検表

・週間点検表

・月例点検表

・年間点検表

のように使い分けます。

 

そして、運用方法では問題を未然に防ぐことを意識します。

下記の3点が大切であると考えています。

 

1)工場内すべての点検表を1カ所に集め、全ての点検表を見える化する。

2)点検項目の中で問題が発生するリスクが高い項目を選択する。

3)リスクの高い項目について◯×点検ではなく「変化」をとらえる定量的な点検をする。

 

工場内にどれだけの設備が存在するのか規模感を把握できること、現場の管理者が一目で設備の状況を把握できること等が1)の背景にあります。

2)3)は予防保全の考え方によります。

故障やトラブルを引き起こす状況に至る際には、それに追随する形で「何か」が変化しています。

 

それを探り出し、それの時系列の変化をとらえ問題を未然に防ぐ。

工場の業種業態にかかわらず、上記の3つはどこの現場でも有効です。

地道な活動になりますが、実績を積み重ねることにより、自社工場の設備を上手に使いこなすことが可能になります。

 

特に、上記の2)3)から得られた知見は、その工場独自のノウハウです。

安定稼働のためのノウハウとなります。

こうして運用された点検表から得られた知見を定期的に整理し、作業標準へ落とし込んでいけばノウハウの見える化が完了です。

 

設備の安定稼働は工場にとっては当たり前に求められることです。

当たり前すぎるだけに、地道で継続的な取り組みで足腰を強くします。

まとめ。

・その設備が連続稼働する状況を維持できている

・「コト」を反映した情報を安定して転写する状況を維持できている

の2つの観点から正常に稼働している状態を定義する。

 

点検項目には抜けがないように設備メーカーも巻き込んで洗い出しする。

設備の問題を未然に防ぐために点検項目を全て洗い出し、仕組みを構築する。

 

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)