国際標準輸送ラベルISO15394
概要
エレクトロニクス業界における生産の海外シフトや自動車業界における国際的な再編成、エレクトロコマースの普及等に見られるように、業界や地域を越えるグローバルなサプライチェーンマネージメントに対する要求が、急速に高まってきている。
そのためには、グローバルなEDIシステムとグローバルな物流システムの標準化が不可欠である。
この要求に応えてISOは、TC122技術委員会で国際標準物流ラベルの検討を行い2000年4月に「出荷、輸送及び荷受用ラベルのためのバーコードシンボルおよび2次元シンボル」ISO15394として規格化した。
また、日本でも2003年にJIS-X-0515として規格化された。
国際標準輸送ラベルの目的
地域、業界を越えるグローバルな標準物流ラベルが、ISO15394の目的である。
これを実現するためには、生産財や消費財のすべてに利用でき、しかも、業界を越えて荷主、物流業者、配送先の3者が利用できる多機能ラベルでなければならない。
そこで、それぞれの立場の要求を整理すると次になる。
(1) 荷主の要求事項
荷主が物流ラベルを使用する目的は、出荷管理である。
そして、出荷管理では、出荷検品、ユーザからの問い合わせに迅速に応えられるリアルタム出荷管理、そして、フィールドで障害が発生した時に迅速に追跡できる出荷履歴管理が求められている。
(2) 輸送業者の要求事項
物流業者は、常に物流効率を高めコストダウンを図ろうとしている。
つまり、それは、トラックの積載率を高めることであり、物流センターで大量の荷物を高速で仕分けすることである。
しかし、今後、物流業者は、単に物を運ぶだけでは成り立たなくなっている。
荷主は、物を運ぶことに支払う金額の比率が減少していき、早く運ぶ、安全に運ぶ、正確に運ぶ、特別な環境で運ぶなどの物流付加サービスに支払われる金額の比率が増大しているからである。
つまり、物流業者の利益の源は、情報サービスに変わってきている。
貨物追跡の情報提供サービスは、物流業者の差別化に大きな役割を果たしてしることは周知のとおりである。
また、正確な請求管理や顧客の部門別請求管理などのきめ細かい請求管理も重要な情報サービスとなる。
(3) 配送先の要求事項
配送先は、入荷処理を迅速かつ正確に、しかも省力化したいと常に考えている。
生産材では、注文番号や製造番号等の管理番号、または、製品番号や数量等の製品データを入力し、更に、必要に応じてロット番号やシリアル番号等の品質データを入力していた。
また、消費材では、注文番号やJANコードのような製品番号、または、荷姿や数量を入力するためのITFコードを入力し、更に、仕分のために店舗コードを入力することもあった。
このように、入荷処理は、必要のデータをそれぞれ入力してきたが、これらの複数のデータを1度に入力したいと考えている。
また、流通業界では、ASN(事前出荷通知)により自動入荷検品を行うために、出荷連続梱包番号のバーコードを印刷したSCM(出荷カートンマーキング)ラベルを読み取っている。
EDIにより事前出荷通知が確実に届くようになれば、梱包IDを入力することで済むが、万が一にネットワークやホストコンピュータの障害により事前出荷データを入手できないことを想定すると、ペーパーEDIが必要である。
国際標準ラベルの概要
今まで説明してきた荷主、物流業者、配送先の要求を満足するために、国際標準物流ラベルでは、物流業者用スペースと荷主と配送先の顧客用スペースを用意し、更に、唯一の梱包識別番号としてライセンスプレートを付加した構成になっている。
(1) 物流業者用スペース
ラベルの上段が、物流業者用のスペースになっている。
ここでは、まず、発送元の名前と住所を左または上に小さく記入し、配送先の名前と住所をその右または下に大きく記入することに決められている。
文字サイズによって配送先を間違わないような工夫がなされている。
住所情報の下に物流業者として必要な情報を記入するスペースがある。
ここでは、配送通知番号や原産国、荷姿、体積、重量等の情報を記入できる。
また、このスペースに物流業者用の2次元シンボルとして、MaxiCodeを印刷することができる。
MaxiCodeは、仕分システムや追跡システムのために作成された物流用シンボルで、読取速度を早くするために、シンボルの中心に同心円の切り出しマークを持ち、データ量によってシンボルサイズが変化しない固定サイズである。
また、データを大きくすると読取時間が長くなることから、最大情報量を144モジュール(標準誤り訂正の場合93文字)と小さく規定している。
更に、読取の信頼性を高くするために、データを切り出しマーク周辺の一次エリアとその回りの二次エリアに分けている。
そして、輸送用シンボルとして標準化されたモード2とモード3では、物流で特に重要な国コード、郵便コード、サービスクラスを一次エリアに配置している。
モード2は、郵便番号が数字(9桁)のときに使用し、モード3は、郵便番号が英数字(6字)のときに使用する。
また、一次エリアは、二次エリアに比べ高い誤り訂正レベルを適用している。
(2) 顧客用スペース
顧客用スペースは、荷主と配送先との間で使用されるスペースである。
取引先コード、注文番号、製品番号、数量、ロット番号等の情報を記入できるようになっている。
また、このスペースには、配送先に渡すこれらのデータやEDIデータのためにPDF417を印刷することができる。
PDF417は、仮名漢字やバイナリーデータ等、全てのデータを効率良く圧縮し、エンコードできるので、物流業者が漢字を必要とする場合は、これを利用すれば良い。
JIS-X-0520では、当事者間の合意があればPDF417の代わりにQR Codeを使用することができる。
PDF417は、EDIデータのような大きなデータに適している。
なぜなら、スタック型シンボルであるために、バーコードのように横長に印刷することができ、しかも、それをレーザスキャナで読み取ることができるからである。
これは、イメージスキャナのように画素数による情報量の制限が生じさせない。
更に、汚れにも強く、誤り訂正率の範囲で確実な読取を保証できるのも大容量データに適している所以である。
ISOでは、世界中、広く何処でも確実に読み取れるようにするために、モジュール幅は、0.25mm以上に規定しており、モジュールの高さもモジュール幅の3倍に決められている。
更に、リーダの読取幅を越えるシンボル長にしないために、最大12データカラム(列)とし、誤り訂正は、レベル5を推奨している。