問題点の根本的な真因はどのようにして発見するか|元トヨタマンの目

問題点の根本的な真因はどのようにして発見するか|元トヨタマンの目

「5W1H」というのがある。

この手法は疑問を持って幅広く問う場合に使われる。

 

Why(なぜ:必要性の追求)
What(なに:対象物)
Where(どこ:場所)
When(いつ:時期)
Who(だれ:人)
How(どのように:方法)

 

この手法では表面的な問題の発見に留まってしまい、対策も表面的なものとなってしまう。

 

トヨタの現場では、根本的な真因を発見する方法として「5Why」を使う。

 

Why(なぜ:原因を考える)
Why(なぜ:その奥の原因を考える)
Why(なぜ:そのまた奥の原因を考える)
Why(なぜ:そのまたまた奥の原因を考える)
Why(なぜ:そのまたまたまた奥の原因を考える)

 

問題点の真因の発見のためには、
「先入観を持たずに白紙になって観察する」
「事実の背後にある真実を発見する」

そのためには、
「半日ぐらいはジッと立って観察する」
というぐらいの態度が必要である。

 

それでは具体的事例をご紹介しよう。

「機械が動かなくなった」

「なぜ動かなくなったのか?」

「オーバーロードがかかってヒューズが切れたからだ」

 

<対策1>
ヒョーズの取替え

「なぜオーバーロードがかかったのか?」
「軸受部の潤滑が十分でないからだ」

「なぜ十分潤滑しないのか?」
「潤滑ポンプが十分汲み上げていないからだ」

 

<対策2>
潤滑ポンプの取替え

「なぜ十分汲み上げないのか?」
「ポンプの軸が磨耗してガタガタになっているからだ」

「なぜ磨耗したのか?」
「ストレーナーついていないので切粉が入ったためだ」

 

<対策3>
ストレーナーの設置

 

どんな人間の頭脳もスーパーコンピュータよりも断然優秀で、時間をたっぷりかけて経験さえ積めばこのような思考は瞬時に判断して、行動も起こすことができる。

したがってトヨタに限らずどんな現場でもこのようなことは行為としては行なわれている。

しかしその思考過程、処置過程を上記の事例のように、正確に紙に書いてみることは非常に難しいことだ。

 

トヨタはあえてそれに挑戦し、ベテランが長年かけて身につけた手法を、新人にも短期間で修得させれるようにした。

さらに思考過程を紙にすることで、すべてが顕在化し、管理監督者も行為者の頭のなかを見ることが可能になり、助言・修正ができるようになる。

これこそが本当の「見れる化」なのである。

 

元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。