問題の発見が原点|元トヨタマンの目

問題の発見が原点|元トヨタマンの目

誰でも、もし「ムダだ」と思ったら、当然それを省くことに努力する。

問題は、「本当はムダであるのに、それをムダだと思わないこと」だ。

すなわち、「問題点はない」と思っていることこそが大問題なのだ。

ムダは現場の中に数多くあるものだ。

 

しかし、それは「私はムダですョ」と自ら名乗りるような性格のものでは決してない。

「一見、いかにも有用そうな作業」のような外見をしている。

それは、われわれが「その本質を見破って摘み取る」ということでなかればならないものである。

「いまなんでもないと思っていることに中から、積極的に困ることを見つけよう」という考え方でないと、改善ということはなかなかできない。

 

「問題を発見する」ためには、よい意味での「現状に不満を持つ」必要がある。

「余は満足である!」と、現状にドップリとつかって安心している人は、絶対に改善を考えない。

「これくらいの不良が発生するには仕方ない。どこの工場でも、これくらいは不良を出しているのだから、『世間並み』であって、別に問題にする必要はない」

このような人は、いつの間にか「観念が慢性化」してしまい、実は「本当は問題「であるのに、それを「問題として感じない」ようになってしまっているのだ。

 

いま、「問題はない」と思っている中から問題を見つけ出す。

いま、別に「問題はない」と思っている機械の側に、ジッと1時間立って観察することによって、「あっ!なぜこんなことをやっているのか?」と問題点を発見する。

現状の仕事を「付加価値を高める仕事」「原価のみを高める仕事(たとえば運搬)」の2つに区分して観察する。

そして、「原価のみを高める仕事」を、「絶対的なムダ」と認識することによって、「でも、こうしなければ『仕方がない』」と考えないで、「もっと違ったやり方はないか?」「もっと良いやり方はないか?」「いっそのこと無くしてしまうことはできないか?」と、徹底的な追及を何回も繰り返す。

*原価のみを高める仕事……運搬……手で運んでいた→車で運ぶようにした→レイアウトを変更して運ばなくてもよいようにした

 

「常に不満をもつ」「常に、明日の『より一段と高い進歩』を希求する」という態度こそが、「問題発見のキーポイント」だ。

いまもし「ムダを省け」というスローガンを掲げている会社があったら、「ムダを見つけよう」というスローガンに変えた方がいい。

– 新郷重夫講演集より抜粋

 

P.S.

トヨタ生産方式は、新郷重夫氏からの教えも非常に多くの部分を占めていることがここからも分かる。

しかし、新郷氏の思想は「平準化」の部分にまでは至っていない。

「平準化」→「かんばん」の部分にトヨタのオリジナリティがある。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。