品質管理を理念として製造と品質の一体化で成長する
品質管理や品質保証を理念ととらえ製造と品質を一体化した製造部門を構築して、付加価値拡大の土台をつくる、という話です。
1.現場の品質を管理・監督するのは品質管理部門ではない
モノづくり現場で品質を管理・監督するのは誰でしょうか?
規模の大きな工場では、通常「品質」を専門に扱う部隊が設置されています。
品質管理部や品質保証部です。そして品質管理や品質保証は次のように定義されています。
品質管理は、「買手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作りだすための手段の体系」
品質保証は、「消費者の要求する品質が十分に満たされていることを保証するために、生産者が行う体系的活動」
(出典:『生産管理用語辞典』)
両者ともに“体系”という言葉がついているのに気が付きます。
つまり品質管理や品質保証という特定の業務が存在しているのではありません。
工場の部門で一般的に存在する、設計や設備、製造各部門、発送等では、その部門を特定する業務が存在します。
特定されているのでその業務に関連した問題が発生すれば、その部門が先頭に立って対応せねばならない。
また、その道のプロなわけで、業務に関連したアイデア等も、その部門から出てくることが多いです。
一方で品質保証や品質管理の部門に関連した問題、つまり品質問題が発生したら、その原因や責任が品質保証部や品質管理部にあるでしょうか。
設計や設備、製造各部門とは、少々、事情が異なります。
ですから、モノづくり現場で品質を管理・監督するのは、その工程や担当部署となります。
当然と言えば当然。品質は品質管理部門がやるからカンケイない! と考えている現場は誤りです。
2.ヒンショーの仕事はクレーム処理?
自動車部品の製造工場に勤務していた時、その工場には品質保証部がありました。
「ヒンショー」と日常的には呼んでいました。その「ヒンショー」にはクレームの度にお世話になったのを覚えています。
というように、個人的には「ヒンショー」=クレーム処理と言う印象が強かったのが、正直なところです。
新規顧客を開拓していた頃で、納入先も増え、したがって顧客別に求められる仕様も多様になり、品質管理や品質保証の業務が複雑化してきた頃です。
主要な顧客が特定されていた時代は、そちらの方向のみ見ていればイイワケで、製造する側もその品質レベルを理解していきます。
顧客の数が少ない状況から顧客の多様化が進めば、それだけ仕様も多様化します。管理項目が増え、品質管理や品質保証の業務もたいへんです。
クレームが発生すれば、ヒンショーは現場にヒアリングをし、現場と共に対策案を考え、顧客へ提出する対策を作成していました。
そして、客先へ報告です。
現場と上手にコミュニケーションを取ること、スキルや現場の知識、顧客に安心感を与える説明力が求められる業務でした。
攻めのヒンショーと称して、本来は先手必勝で問題を未然に防ぐ仕事の実行を方針に、掲げていましたが、現実はなかなかそうならず。
どうしても事後処理的な仕事が多かった。
納入先が増えれば、トラブルが発生するリスクも高まるわけで、その結果、社内外での品質トラブル対応が目につくことになります。
客先が増える時期には避けられない事態です。
「ヒンショーはたいへんな仕事だ」という考えに自然と至ります。
それでも、品質保証や品質管理を専門に担当する部門があり製造側としては大いに助かりました。
クレームの有無にかかわらず、生産活動は継続しなければなりません。
品質トラブルが発生すれば、その業務が加わります。
全てを単独でこなそうとすれば、廻らなくなる。
その意味で、ヒンショーは品質トラブルが発生した時、製造部門にとっては頼りになる部門でした(という考え方ではダメなんでしょうが……)。
とは言え、本来、攻めのヒンショーではないですが、トラブルを未然に防ぐ業務をドンドンできる状況が理想の姿です。
3.品質保証や品質管理は理念
大手と異なり中小モノづくり工場で独立した品質管理部門を抱えているところは少ないです。
製品を造る作業と検査する作業は分離すべし、という原則から考えれば、本来、独立した部門があるのが望ましい。
顧客にも安心感を与えることができ、事業展開する上でも有利です。
ただ、潤滑に人財を抱えられなければ、兼務せざるを得ないです。
製造部門長が品質部門長を兼ねることになります。
こうした場合、本人の経歴から考えて、あくまで製造部門長が品質関係も兼務するのであって、品質部門長が製造関係を兼務するのは稀です。
ですから、業務はどうしても「製造」が優先されます。
致し方のないトコロ。
しかし、今後は、そうもいっていられない事態になってきます。
存続と成長には付加価値の拡大が必要だからです。
そして付加価値を拡大させるためのキーワードのひとつに“多様性”への対応、具体的にはマス・カスタマイゼーションがあります。
品質の多様性にも対応できる体制を構築していくことも今後は求められます。
顧客ニーズの多様性に応える技術や仕組みを構築できたが、品質やクレームへ対応できず、事業に失敗したという残念な状況に陥らないためにも大切です。
そもそも品質管理や品質保証は業務そのものを示すのではなく“体系”を示す言葉です。
そこで、品質管理や品質保証を“理念”ととらえます。
製造部門へ品質業務を積極的に取り入れます。
そして、製造と品質を一体化させる。
製造部門の業務が当然、増えます。それまでの造ることに専念していればよかった状況に品質管理の業務が加わるわけですから。
品質管理や品質保証のやるべき業務を列記したうえで、ひとつずつ製造部門へ業務を定着させます。
したがって、従来の製造業務を大幅に見直す必要がありますが、これは、固定費の投資効率を向上させる取り組みに他なりません。
製造と品質を一体化させたイメージを膨らませ、業務形態を再構築します。各革新的な取り組みです。
そのために、トップが自ら品質管理や品質保証に関与します。
トップが積極的に品質管理や品質保証に関わり、革新を後押しします。
製造と品質が一体となった製造部門は多様性にもバッチリ対応できます。
付加価値化拡大の土台づくりとなります。
存続と成長が実現します。
まとめ
品質管理や品質保証を理念ととらえ製造と品質を一体化した製造部門を構築して付加価値拡大の土台づくりをする、という話です。