分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること

分かりにくい用語とその意味(4)軸振動センサのX-Y取付けでできること

今回は、大型回転機械の軸振動計測に適用される非接触変位センサの取付けに関連して、軸振動センサのX-Y取付けと1方向取付けでできること、できないことについて説明します。

軸振動センサのX-Y取付けでできること

前回、図4に示すような軸振動センサのX-Y取付けに関する規格・規定と、X-Y取付けの目的に関して説明しましたが、今回もそれに引き続き、軸振動センサのX-Y取付けと1方向取付けでできること、できないことについて説明します。

スクリーンショット 2017-08-02 15.01.03
▲図4. 軸振動センサの取付図

 

まず、振動モニタを使った振動監視に関しては、X-Y取付けでも1方向取付けであっても振動値の計測が可能です。

ただし、前回述べたように、1方向取付けでは振動振幅を過小評価してしまうリスクがありますが、X-Y取付けではそのリスクを避ける、または最小限に抑えることができます。

次に、infiSYS RV-200等の振動解析システムとの組合せによる、各解析メニューの適用可否に関して考えてみます。

 

この時、軸振動センサのX-Y取付けか1方向取付けかということだけでなく、同じ回転軸上で検知した位相基準信号があるかないかも含めて考えてみましょう。

表4にX-Y取付けと1方向取付けにおける解析メニューの適用可否の比較を示します。

まず、X-Y取付けと1方向取付けの比較が分かりやすい右側2列の位相基準がある場合を見てください。

 

位相基準がある場合、X-Y取付けでは全ての解析メニューに対応していますが、Smaxやオービット、軸軌跡、またフルスペクトル等回転方向が関わるような90度の角度を持って設置された2方向のセンサ信号が演算に必要な解析メニューに関しては1方向取付けでは適用できません。

 

▼表4. X-Y取付けと1方向取付けにおける解析メニュー適用可否
FireShot Capture 1 - 分かりにくい用語とその意味 (4) 軸振動セ_ - https___www.shinkawaelectric.com_column_20131008.html
【記号 ○:適用可能 ×:適用不可 △:一部機能制限あり】

 

次に表4の中央2列の位相基準なしの場合を見てみます。

位相基準なしでは、X-Y取付けであっても多くの解析メニューが適用不可となっていますが、それら適用不可の解析メニューに共通しているのは、回転数と次数・位相解析が含まれるというところです。

また、スペクトル系グラフ(※)では次数解析ができなくなるものの、横軸を周波数として表示することは可能なため、記号△の「一部機能制限あり」として示しています。

 

なお、表4の解析メニュー「X-Yグラフ」に関しては、その名称から軸振動センサの「X-Y取付け」と関係がありそうに見えてしまいますが、実は関係ありません。

X-Yグラフというのは、直交座標系グラフのX,Y座標軸にそれぞれ任意の測定パラメータを配置して、それぞれのパラメータの相互の関連を見るためのグラフです。

例えばX軸を軸受温度、Y軸を振動振幅としてそれらの関係を見ることができます。

 

解析メニューの適用可否に関しては基本的に表4のようになりますが、もう少し細かく条件を見て行くと表4とは多少異なってくる部分や注意を要する部分もあります。

その辺りの詳細は以下の注記をご参照ください。

 

1. 位相基準なしでも、シミュレート回転数を設定しておき、機械がその回転数で運転している時には、位相角は演算できないが、各次数(0.5X, 1X, 2X, nX, Not-1X)の振幅値は演算、表示できる。

また、スペクトル系グラフ(※)の次数表示も可能である。

ただし、いずれも回転数が変化して設定したシミュレート回転数と異なっている時には、これらの各次数の振幅値は正しく演算されない。

 

2. 対象の軸振動センサが取付けられている回転軸には位相基準はないが、ギアで結合された別の回転軸に位相基準がある場合、位相角の演算はできないものの、各次数(0.5X, 1X, 2X, nX, Not-1X)の振幅値は演算できる。

また、スペクトル系グラフ(※)の次数表示も可能である。この場合には、回転数が変化してもそれに追従して次数演算を行うため、各次数の振幅値は演算、表示できる。

 

3. X-Y取付けと1方向取付けの両方に適用可能(○)となっている解析メニューは、基本的にX-Y取付けにおいても1方向ずつの演算となる。

 

4. 位相基準なしとありの両方に適用可能(○)となっている項目は、振動信号のみ使用し、位相基準信号を使用していないで演算している。

ただし、オービットと波形グラフに関しては、それらのプロット上に位相基準マークを小さな白丸で表示し、オービット&波形グラフでは更にその直前の線を消している。

これによりオービットと波形グラフにおける1回転分のプロット範囲が分かる。更に、オービットの移動方向(進路)も分かることになる。位相基準なしの場合、この位相基準マークが表示されないため、解析メニューの「波形グラフ」と「オービット&波形グラフ」は記号△の「一部機能制限あり」としている。

 

※スペクトル系グラフとは、スペクトル、ウォータフォール、カスケード、フルスペクトル、フルウォータフォール、フルカスケードの周波数解析グラフを指す。

出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社


アペルザニュース編集部です。日本の製造業、ものづくり産業の活性化を目指し、日々がんばっています。