分かりにくい用語とその意味(2)ターゲット、システムケーブル長
今回は大型回転機械の軸振動や軸位置などの状態監視に適用される非接触変位センサのターゲットとシステムに関する用語の意味について説明します。
非接触変位センサのターゲット
ここでは渦電流式非接触変位センサの測定対象、つまり被測定物をターゲットと呼んでいます。
例えば、タービンの軸振動を測定している場合は、そのターゲットのロータ(車軸)がターゲットということになります。
2010年10月号「渦電流変位センサの原理と特徴〜原理と特徴(概要)〜」で説明したように、渦電流式変位センサの原理から、電流が流れるものであれば磁性、非磁性に関わりなく渦電流変位センサのターゲットとして測定が可能です。
ただし、高周波の渦電流を発生させるため、現実的には良導体である金属に限られます。
また、材質によって特性が変わりますので校正ターゲット以外の材質を測定する場合には注意が必要です。
API 670規格ではAISI 4140 steel (JIS SCM440相当)が標準校正ターゲットとして記載されており、API 670規格に準拠したVK-202AやFK-202Fトランスデューサの場合、SCM440をターゲット材として校正されています。
図2にFK-202Fにおける数種類のターゲット材質による静特性を示します。
▲図2. FK-202Fターゲット材質による静特性
システムケーブル長
渦電流式変位計は図3に示すようにセンサと延長ケーブルとドライバ(変換器)から構成されていますが、センサケーブルと延長ケーブルのトータルの長さをシステムケーブル長と呼びます。
つまり、センサからドライバまでのケーブル長ということになります。
▲図3. FK-202Fトランスデューサのシステム構成
ドライバ(変換器)はセンサコイル+センサケーブル+延長ケーブルで総合的に決定される回路定数(L、C、R)に対して調整されており、この回路定数が変更されるようなケーブル種類の変更やケーブル長の変更はできません。
例えば、既設のセンサと延長ケーブルのトータル長が5mで、ドライバが故障したため交換しようとした場合、新たに設置するドライバはシステムケーブル長5m用のものでなければなりません。
たまたまスペアパーツとして9m用ドライバがあったとしても、これを取り付けても大幅に外れた特性となってしまいます。
また、センサケーブル長と延長ケーブル長の組合せでトータルの長さが4.5m、5.5m、8.5mまたは9.5mとすることもでき、この場合は正規のシステムケーブル長からわずか0.5mしか差がない組合せではありますが、それでも正規の特性から外れて精度を維持できなくなりますので、このようなトータルケーブル長の組合せでは使用することができません。
出典:『技術コラム 回転機械の状態監視や解析診断』新川電機株式会社