出来高制賃金の功罪-作業の標準化が出来ない?!
以前中国工場作業者の賃金体系は、出来高制がよいのか、
それとも時間給(日給月給)がよいのかという話題を取り上げたことがありました。
今回は、それにまつわる事例を紹介したいと思います。
ある中国企業の工場診断をしたときのことでした。
部品を加工する工程での作業を見ていくと作業者によって
作業方法が違っていることに気が付きました。
機械で加工するところは同じですが、
加工前の部品を取るときに1個ずつ取る作業者もいれば、
何個かいっぺんに手に取ってそこから加工している作業者もいました。
加工後の部品も手で箱に入れている作業者もいれば、
滑り台式に滑らせて箱に入れる作業者もいました。
加工後品箱の置き方も当然違ってきます。
言ってみれば標準作業の考え方が全然できていない訳です。
どうしてこうなってしまっているかと言うと、
この工場では作業のやり方は作業者に任せていたからです。
少しでもたくさん加工できる作業手順を作業者自身が考えて工夫して実行していました。
なぜこのようになっていたのか?
それは、この工場では作業者の賃金に生産数量を反映させる仕組みを取っていたからです。
作業者は作業者なりに数量の上がるやり方を一生懸命考えます。
そして管理者は、作業者の工夫には口を出しません。
その方が管理者も楽だからです。
下手に口を出して生産性が落ちるようなことがあると
作業者から文句を言われることもあるので余計です。
管理者と作業者の思惑が一致しているので、作業の標準化はできていませんでした。
端から見れば、一番効率のよいやり方に統一すればよいのにと思うのですが、当事者は頑なです。
ここで一番の問題は、作業者が考えたやり方に不良発生の可能性がある場合です。
当然その方法は変えなくてはなりませんが、生産数が落ちると話は簡単ではありません。
日本人にとっては時間給が当たり前で、
その中で工夫してより良い方法を取ることは何の問題もありません。
しかし、出来高制の賃金体制が普通に取られている中国企業の工場では、日系工場では起きない問題がまだまだあります。