元トヨタマンの他社自動車工場見学記|元トヨタマンの目
トヨタは設備が何かトラブルを感知したら自動的に止まり、あんどんが点灯して人を呼ぶというしくみがすべての工程で行なわれている。
また数え切れないぐらいの設備で刃具交換とか、定期的な品質チェックなど人の作業が必要になった場合、これも自動的にあんどんが点灯し人を呼ぶ。
このような仕組みがあるからこそ人が設備を安心して離れることができる。
またこのあんどんは工場のどこかれでも見えるようになっているため、管理・監督者もあんどんを見ていれば、トラブル発生をタイムリーに認識でき、作業者から連絡が入らなくても、現場にすぐ急行できるようになっている。
機械加工現場などあまり人がいないので、作業者にとっては非常に心強く感じ安心感があるのではないだろうか。
したがって生産管理の責任者だった私も工場へ入るとすぐにあんどんの点灯状況を見た。機械現場であれば、フル生産なら設備停止の赤ランプはそれほど点灯していないはずだし、減産時ならば逆に赤ランプのオンパレードの状態が正常であると言える。
そしてこのように育ってきた私が、トヨタ退職後にある自動車会社の工場を見学した。
なんとその工場にはあんどんらしきものがほとんどないのだ。たとえばボデーの長大なロボット溶接ラインにはまったくあんどんがない。
このうちのどこかでもし何かトラブルが発生した場合、どのように発見し対処するのか本当に心配になった。
そして係りの方に聞いてみると、生産技術屋がどこかのコントロール室で監視をしているとのことだった。
それでは現場製造部との関わり合いはどうなっているのだろうか。トヨタであれば、現地現物で現場にいてすべてが分からなければ許されない。
コントロール室には現場のあんどん情報を集約するかたちになっており、あくまでも主体は現場である。
この見学の帰り道、「やっぱり車に乗るなら、トヨタ車しかないな」と再認識した。