儲かるモノづくりでは欠かせない顧客視点の価値

儲かるモノづくりでは欠かせない顧客視点の価値

工学的水準、顧客視点の価値、付加価値の3者の関係をイメージすることで、儲かるモノづくりを実践する、という話です。

 

1.モノづくりは科学、工学

 

報通信技術を活かして工場内を「つなげる」前に、固有技術や管理技術を分析して工学的な因果関係を明確にします。

IoTで工場内をつなげる前にやらねばならないこと

 

モノづくりは科学ですから、そこで起こる現象は、全て定量的に説明できます。

ですから、現場で発生する事象を考える前提条件として、こうした工学的な因果関係を把握していることが挙げられます。

改善にしろ、技術イノベーションにしろ、現象を工学的に説明できなければ、何をどうするのか論理立てて説明できません。

つまり取り組みが思いつきになってしまいます。

 

こうした知識を現場リーダーが学び、現場で起きている現象を、まず自らいろいろと説明してみる努力は、地道ですがとても有益です。

さらにそうした工学的な知識を現場へも伝えます。

現場では経験と知識が融合することで、新たな知恵が生み出される可能性が高まります。

 

現場は作業だけやっていればいればイイという時代ではありません。

知ることで考えたくなるのが人間の本質です。

知ることで毎日の現場作業の作業内容への理解度が高まり、改善や危険予知、5Sの水準が高まるきっかけとなります。

 

モノづくりは科学です、工学です。

 

2.科学、工学をお金につなげる

 

現場で積み上げられた経験を科学的、工学的な表現に翻訳することがモノづくりで付加価値を高めるカギのひとつです。

カイゼンや技術イノベーションで目指すのは付加価値の拡大、つまり工場に入ってくるお金を増やすことです。

そして、付加価値を拡大するために欠かせないのが顧客視点であり、顧客視点での付加価値はプレミアムを獲得しやすいです。

柔軟性で儲ける

 

つまり、次の関係で工学的な水準は付加価値に変換されます。

工学的水準→顧客視点の価値→付加価値 (※)

 

カイゼンも技術イノベーションも最終的には儲けに繋がらないと意味がありません。

技術的に素晴らしいのに利益率が低くて、お金に繋がらないと事業として継続するのが辛いです。

中国、韓国に攻められた国内家電業界です。

 

当然のことですが、カイゼンも技術イノベーションも取り組む事前検討として成果をお金に換算することが必要です。

その時に(※)の考え方で整理することを提案しています

 

大切なのは真ん中に位置する顧客視点です。

その取り組みが狙っている顧客視点の価値がどのようなものかモノとコトから考えます。

 

そして、

  • 顧客視点の価値と工学的水準
  • 顧客視点の価値と付加価値

の両者の相関を描きます。

 

前者では顧客が望む価値を実現するための技術課題の難易度の高低をイメージします。

また、後者では顧客が望む価値が実際にどれだけの付加価値(お金)を生み出すかをイメージします。

 

モノづくりでシーズを優先すべきか、ニーズを優先すべきか、と議論になることが度々ですが、それはターゲットにする市場次第です。

 

競合が多数参入してきて、自社製品の優位性が脅かされる可能性のある既存市場を対象にするならば、顧客の声(VOC)に耳を傾ける意義は大いにあります。

競合製品よりも一味違う差別化を図る糸口は顧客が握っている。

 

一方で顧客も気が付かないニーズを対象にするならば、そもそも顧客に聞いても分からないわけで、こうしたケースはシーズ志向で行きます。

 

ただし、どちらの場合にせよ、その商品(製品)に価値を見出さなければ、お客様は購入してくれません。

ですから、まずは見えても、見えていなくても顧客のニーズに着目して、その取り組みで扱う商品(製品)やサービスで認められる価値を想定します。

 

そして、その価値を生み出すための技術課題の難易度の高低、つまり開発コストを評価します。

さらに、その価値から生み出される付加価値(お金)、つまり儲けを評価します。

 

下図はそれらをグラフで模式的に表したものです。

儲かるモノづくりでは欠かせない顧客視点の価値

右のグラフでわかるのは赤線は緑線に比べて傾きが大きく、工学的水準が上昇することが、顧客視点の価値の上昇につながっていることを示します。

ですから傾きが大きいほど望ましい関係です。

(出典:MOT技術経営入門 延岡健太郎を参考に作成)

 

また左のグラフでわかるのは赤線は緑線よりも傾きが大きく、顧客視点の価値あたりで生み出す付加価値(お金)がより大きいことを示しています。

 

例えば意匠性を問われる技術などはちょっとした工夫でぐんと顧客の心を握る可能性が高く、また、そうした感性に訴える価値が生む付加価値(お金)は大きい傾向があります。

それが独自技術であるならばますますその傾向は強いです。

カワイイ、カッコイイ、キレイはお金になりやすい。

 

また機能性を問われる技術ではかなりの工学的水準を要求される可能性があるものの家電の事例でも見られるように必ずしもそれらが、顧客視点の価値の上昇につながるとは限りません。

また、そして、そもそも顧客自体が求めていない価値では付加価値の拡大が困難なのが一般的です。

儲かるモノづくりでは欠かせない顧客視点の価値

このグラフはあくまでイメージです。

ただし、こうしたイメージを全員で共有することの意義は大きいと考えています。

 

モノづくりの現場は、結局、お客様が認めてくれる価値をいかに創出すべきかにかかっていることを理解できるからです。

 

このグラフの縦軸、横軸に厳密な数値は必要はありませんが、現状を設定してそこから、どのような方向へ進むかということを顧客視点の価値を中心にして考えるには整理しやすくなります。

 

3.儲かるモノづくりでは欠かせない観点

 

製造現場で起きているあらゆる現象を工学的な観点で説明できることがカイゼンや技術イノベーションへの第一歩です。

そして、儲かる工場経営では、その科学的、工学的な観点を儲かる観点へ変換します。

工場オペレーションでは、現場リーダーや各工程のキーパーソンが中心になって、この科学的、工学的な観点を追求し続けます。

そして、顧客視点で認めてくれる価値を知り、これらをお金に変換するためにやるべきことを考えるのです。

 

モノづくりで技術を追求するあまり、開発は成功したが儲からなかった、という結果は絶対に避けたいです。

そのために、

工学的水準→顧客視点の価値→付加価値 (※)

この3者の関係をイメージします。

儲かるモノづくりでは欠かせない観点です。

 

まとめ。

工学的水準、顧客視点の価値、付加価値の3者の関係をイメージすることで、儲かるモノづくりを実践する。

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)