優先順位

優先順位

トヨタの工場も、当然いろいろなトラブルが発生して、後工程へ製品を遅れない場合がある。

復旧に何時間もかかる場合は、すべてのラインを停止させるが、何とか復旧の目処が立つ場合は、ラインを止めずに、綱渡り操業で後工程へ製品を送ることになる。

私はエンジン工場にいたが、設備トラブルなどで後工程である組立ラインへ順調に送れない場合は、どの後工程へ優先的に送るか決められている。

優先順位1……豊田自動織機とかトヨタ車体とかトヨタ関連会社の組立ライン

優先順位2……トヨタ自動車本体の組立ライン

一般の方が考えると、「トヨタは威張っているから、自分の所を大事にするはずだ」と考えられると思う。

しかし実際は上記のような順序になる。

 

それには次のような理由がある。

同じトヨタ社内の組立ラインをラインストップに追い込んだ場合、同じ社内なので謝るのも簡単にすむ。

しかし、トヨタ以外の会社となると、会社対会社の話となり正式な仁義をきって謝らなければならなくなる。

すなわち、役員同士の話になってしまうからいろいろ面倒になるからだ。

 

工場勤務になって、その優先順位の事実を知った時、「トヨタもなかなかやるな」と思ったが、その理由を知った時、「なーーんだ。そういう理由からだったのか」と少々がっかりした。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。