会社にも品質があると考え現場の品質向上にも励む

会社にも品質があると考え現場の品質向上にも励む

会社にも、工場にも品質があると考えて、あるべき仕事のやり方を示しながら現場の品質を高める、という話です。

1.コマツウェイ

ICT(情報通信技術)ブルドーザーやハイブリッド油圧ショベル、無人ダンプトラック運行システムなど、世界初の製品を開発してきたコマツのモノづくりを支えているのが「QCサークル」です。

コマツは1960年代から熱心に品質の向上に取り組んできました。

外資系建機メーカーであるキャタピラー社の日本進出に対抗するためでした。

 

ですからQCサークルの老舗ですし、カイゼンのベテラン企業といえます。

コマツのモノづくりの土台には品質に対する確固たる意識が埋め込まれています。

そして、品質に対する高い意識をもった人財を育てる明確な意思があります。

 

こうした価値観や心構えや行動様式をコマツウェイと表現しています。経営理念です。

コマツにおいて、“品質”という概念は、モノづくりに留まらず、工場経営や会社経営の次元でも機能しています。

コマツ相談役の板根正弘氏は次のように語っています。

 

「品質管理は生産のイメージが強いですが、設計からサービスまで全部門が対象になります。だからこそトップ自らが積極的に関与することが極めて需要です。

私自身、コマツ社内で、経営企画、商品企画、設計、工場管理、そしてサービスとさまざまな部門を経験してきました。

この中で、品質管理の極意は何かと問われたら、“見える化”だと思っています。

 

品質管理は見えないものを見える化して、その中でこの部分とこの部分を押さえればいいということを、どこまで明確にできるかがポイントになります。

見える化すれば、昔はできなかったことができるようになります。

トップが自ら経営上の問題の見える化を進め『こういうことなのか』と本質を捉えることができれば、確信を持って変革に取り組めます。

 

部下に丸投げして分析させたものを見ても確信がないと徹底的に追及できません。

トップの意識が薄い会社に品質を大事にする文化が芽生えることはありません」

(出典:『日経ものづくり』2105年6月号)

2.会社の品質という考え方

中根氏の上記のコメントの中にトップという表現が3回も出てきます。

企業のトップの方が「トップは……」と語るのですから、説得力があります。

品質の概念をモノづくりに限定せずに広く、工場経営、会社経営の範囲まで広げて説明しています。

 

中根氏が現場で実務に従事していた頃、品質にこだわりを持って仕事をしていたことが伺えます。

ご自身が経験してきたからこそ、確信をもって現場へこうしたことを伝え、語っているのでしょう。

本質を捉えるには、見える化が必要。その見える化の実践こそが品質管理である。

 

こうした考え方がコマツウェイです。

品質について繰り返し語る経営者がいて、コマツウェイという明文化された独自の経営理念がある会社では、“品質”という表現はあたりまえのコト。

現場でも仕事のやり方として自然と“見える化”を実践し品質を大切にせねばと考えます。

 

“品質は品質管理部門の仕事だ”と考えるのとは全く次元が違います。

仕事のやり方として、現場にまで品質管理の意識が定着していますから。

会社の意識、仕組みそのものが品質管理体制。こうなると会社に品質管理部門があろうと、なかろうと、お客様に与える安心感にゆるぎはありません。

 

経営理念でお客様視点、地域視点、従業員視点で目指すべき姿を語り、そして、○○ウェイ等の表現で自社独自の仕事への考え方を示す。

両者がセットになってお客様の安心感を引き出しているともいえます。

自社製品(サービス)に対する品質保証としても機能している。

 

製品にだけでなく、それを生み出す企業、工場にも“品質”という考え方が当てはまることに気づきます。

会社の品質を向上させることでお客様の満足度を上げ、その結果従業員の満足も上がり、会社の品質がますます上がっていきます。

中根氏も話から経営者や管理者が自ら語って実践することの大切さを改めて知ると共に、“会社の品質”という表現が浮かびました。

 

会社にも、工場にも“品質”があると考えます。

そして、モノづくり現場でもあるべき仕事の姿を示しながら、“モノづくり現場の品質”を高めていきます。

まとめ

会社にも、工場にも品質があると考えて、あるべき仕事のやり方を示しながら現場の品質を高める。

 

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)