任天堂によるマリカー提訴について【知財ニュース拾い読み】

任天堂によるマリカー提訴について【知財ニュース拾い読み】

任天堂 – 2017/2/24 – https://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2017/170224.html

任天堂が、マリオ等のキャラクターの衣装を用いて公道カートのレンタルサービスを行う株式会社マリカーに対して、訴訟を提起したことが話題になっています。

任天堂側は、株式会社マリカーの行為が、不正競争行為および著作権侵害行為に該当すると主張しています。

 

上記のような公道カートのレンタルサービスを行う事業者は株式会社マリカー以外にも存在しているにも関わらず、株式会社マリカーだけが訴えられていることから、任天堂は「マリカー」という社名を特に問題視していることがうかがえます。

つまり、任天堂は、「マリカー」によって提供される公道カートのレンタルサービスが任天堂と関係があるように見えてしまうことについて、問題があると考えているようです。

そして、この社名「マリカー」について、任天堂は、「マリオカート」の著名な略称であり、不正競争行為に該当すると主張しています。

ここで、一部の報道(http://gogotsu.com/archives/26667)にあるように、株式会社マリカーは、自動車のレンタル等について登録商標「マリカー」を取得しています。

この登録商標「マリカー」は、任天堂からの登録異議の申し立てがあったにも関わらず維持されています。

このことから、特許庁としては、任天堂とは関係のない業者が公道カートのレンタルサービスについて商標「マリカー」を使用しても、需要者が、任天堂と関係があるように誤解してしまうことはないと判断しています。

しかし今回、任天堂が問題としているのは不正競争行為であり、その判断主体は特許庁ではなく、裁判所となります

。裁判所は、特許庁の判断に拘束されることなく判断を下すことができます。そして、裁判所が、特許庁と異なる判断をする可能性は十分にあると考えられます。

 

昨年のリオオリンピックの閉会式では、安部首相がマリオに扮して登場しました。

また、任天堂のキャラクターは、スポーツがとても得意で(https://www.nintendo.co.jp/3ds/aunj/index.htmlhttps://www.nintendo.co.jp/titles/20010000023149)、過去のオリンピックにも幾度となく出場しています(http://search1.nintendo.co.jp/search/software.php?keyword=%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF&release_mode=&SearchWindow=1&mode=mf)。

よって、2020年の東京オリンピックでも、任天堂のキャラクター達が活躍する可能性は非常に高いと考えらえられます。

このような東京オリンピックを控えた時期に提訴に踏み切った任天堂には、タダ乗りしてくる業者を牽制しておきたいという意図があるのではないでしょうか。

また昨年から、ポケモンGOの「ながら運転」による交通事故がいくつか報道されています。

このため、任天堂は、マリオ等のキャラクターが交通事故を起こしてしまうことも心配しているのではないかと考えられます。

出典:『任天堂によるマリカー提訴について【知財ニュース拾い読み】』(『発明plus〔旧:開発NEXT〕)


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。