他人の権利を回避するのは知財戦略の一つ

他人の権利を回避するのは知財戦略の一つ

特許は一定期間で権利が切れます

ジェネリック医薬品は、特許切れの医薬品を安価で提供するものです。

最近では、他にジェネリック家電、ジェネリック家具といった様々な権利切れに関係するジェネリック商品が出てきています。

特許などの知的財産権はある一定期間独占権が認められていますが、一定期間を過ぎた後は公のものとして扱われるため誰が使ってもいいのです。

特許の世界では逃げるのも戦略の一つ

ジェネリック製品には目が行きますが、特許回避製品というものがあるのもご存知でしょうか。

特許回避製品とは、特許は現時点で存在しているのですが、存在する特許を逃げた特許侵害しない製品のことです。

特許侵害しない製品であればジェネリック商品と同じように安く商品を作ることができるのです。

 

最近ニュースで話題になったものとして、100円ショップで販売している「iPhone対応USB充電専用ケーブル」があります。

アップル社は「iPhone対応USB充電専用ケーブル」について日本を含めて各国で特許出願をしています。

その発明の1つに、ケーブルのコネクタの向きをどちらにしても指すことができるというものがあります。

 

100円ショップの商品は、ケーブルのコネクタの向きをどちらにしても指すことができず、一方向からの場合にのみ指すことができます。

これは考え方を変えれば、劣化版にあたります。ですが、100円ショップのこの商品はとても売れ行きが良いそうです。

需要者が求めていたのはコネクタの向きをどちらからも指せる便利さではなく、安さであったということができます。

回転寿司にも権利があった

100円ショップで言えば、回転ずしがあります。

今では100円の回転ずしが主流となり、スシロー、かっぱ寿司、くら寿司等のチェーン店が全国で展開をしています。

回転ずしは、運ぶ手間を省くことができ人件費を安くすることができます。100円の寿司屋が成り立つのも回転ずしにしているところにあるとも言えます。

 

実は、回転するレーンについても以前権利を「元禄寿司」が持っていました。

1978年に権利が切れるまでは独占状態であったのですが、権利が切れたことにより新規の回転ずしチェーンが参入してきたのです。

ただ、初めて回転ずしを使った元禄寿司は、飲食店の名称として「廻る」「回転」などを商標登録しております。

 

そのため、新規参入の店は「回転寿司」の名前を使うことができませんでしたが、近年元禄産業は飲食店における「回転」の使用を解放しているようで現在は回転ずしという名前は使えるようになっているようです。

商標を除く知的財産権の権利は一定期間独占できます。

また、権利があっても特許権等を回避する工夫をすることで特許製品と似た商品を販売することもできます。

 

知的財産権の権利が切れるタイミングを見て商売をしたり、特許権等を回避して商品を作るのも有効な知的財産権戦略です。

出典:『他人の権利を回避するのは知財戦略の一つ』開発NEXT


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。