仕事の流し方を考える

仕事の流し方を考える

仕事の流し方を設計していますか?

1.高騰する世界の人件費

世界の人件費が高騰していています。

2017年時点、世界各国の代表的な都市・街で働く作業者(一般工)の月額賃金は下記のとおりです。

東京       2406ドル

名古屋      2447ドル

デュッセルドルフ 4365ドル

サンフランシスコ 3555ドル

ブリュッセル   3493ドル

上海        560ドル

大連        442ドル

バンコク      378ドル

ハノイ       204ドル

ヤンゴン      135ドル

(出典:日経ものづくり2018年9月号)

 

人手不足は中小現場での大きな問題となりつつあります。

2018年版ものづくり白書によると、日本の製造業を対象に経済産業省が実施した「人材確保の状況」に関するアンケートでは、人材確保が「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」と回答した企業は、2016年が22.8%、2017年が32.1%、わずか1年で9.3%アップしています。

加えて、「特に問題ない」という回答が19.2%から5.3%と13.4%減っていると報告されています。

 

この調査には、大手企業も含まれていますので、製造業では、大手、中小に関わらず、「人手不足が既に現実の問題となっている企業」、あるいは「そこまでには至っていないものの問題視している企業」、これらが確実に増加傾向にあるようです。

国内においては、少子化という避けられない外部変化もあり、中小現場の人手確保戦略は5年先、10年先を見据えた欠かせない論点となります。

世界的な人手不足によって、人件費が高騰しているようです。

 

伊藤がかって勤務していた自動車部品の工場では、台湾系資本中国メーカーと交流がありました。

今から15年前程に遡ります。

 

生産の委託をすることがあり、そうした中で技術の交流をすることもありました。

技術交流の一環で、現地工場を訪れる機会がありましたが、当時、中国の人件費は国内対比で20分の11と言われており、そうした現場を目にしたことがあります。

20分の1ですから、日本人作業者を1人配置するのと、中国人作業者を20人配置するのとで、人件費はイーブンというわけです。

 

当時、安さを求めて中国の工場をパートナーとしていました。

頭数を揃えると解決できるようなことで競争しても絶対に勝てないと、当時、肌で感じたものです。

 

それが、今や、賃金は国内対比で5分の1にまで縮小されています。

いわゆる購買力を高めた中間層、富裕層と言われる人々が増え、仕事の選択肢が広がる中、中国でも製造現場の人手獲得合戦が繰り広げられているようです。

中国が「世界の工場」から、「世界の市場」へ移行しつつあると言われる所以です。

 

ただし、中国に代わって、かっての中国の役割を果たす新興国が出てきていることにも注目しなければなりません。

ハノイ、ヤンゴン、つまりベトナムやミャンマー等、新興国が今後、世界の工場になりそうです。

2.新興国と同じ仕事のやり方では儲からない

当然ですが、私たち中小製造現場が、かっての中国、これからの新興国と同じ仕事のやり方をしていては儲かりません。

言われて久しいですが、中小製造現場がマス・プロで儲ける時代はとうの昔に過ぎ去っています。

 

作業者視点の仕事のやり方を、顧客視点へ変えることが求められています。

部分最適化から全体最適化です。

 

多くの中小現場は、レイアウトや仕事の流し方、役割分担や業務手順、さらにはものの考え方が、大ロットで流すやり方のままになっていると感じることがあります。

70年代、80年代は、それでも問題はなかったかもしれませんし、そうした体制は生産性を高める上で、好ましいことであったと推察されます。

 

それが、平成バブルが崩壊し、90年代、00年と経過するにつれて、現場で仕事をするのに窮屈やストレスを感じていないでしょうか?

マス・プロの考え方のままでは、顧客の要望に対応できなくなっているからです。

 

これからの中小現場が生き抜く道がマス・プロでないことは、既におわかりのことと思います。

マス・プロプロダクションに代わって、マス・カスタマイゼーションやマス・ラピッド生産の道を究めたいのです。

 

仕事の流し方、やり方を根本から変える必要があります。

顧客の多様性へ柔軟に対応できる企業が顧客に選んでもらうための絶対条件ですから、そうした変化について行けない現場は生き残れません。

 

外部環境が変化しつつある今、内部環境を変える必要があると現場へ知らせることが現場改革のきっかけです。

新興国と同じ仕事のやり方をしていても生き残れないと伝えたいです。

変化を機会にして成長する姿を描き、現場のやる気を引き出します。

3.手順計画で仕事の流し方をチェックする

私たちはモノづくりで商売をしています。

原材料を加工して価値を加え、顧客から付加価値額分の報酬をいただく。

 

そうした製造業で現場の生産性を向上させる体系があります。

それが生産管理3本柱です。

 

この体系を皆さんの現場へ上手く当てはめ、現場での仕事のやり方を変えるのです。

従来のマス・プロからマス・カス、マス・ラピへ仕事のやり方を変える考え方の定石もそこから引き出せます。

 

例えば、手順計画です。

手順計画とは、文字通り、原材料を加工する手順を決める計画です。

 

どうしたら、“顧客に選ばれる”仕事の手順となるかを考えます。

内部事情を優先した観点から、“顧客に選ばれる”観点へ変えるのです。

 

マス・プロ視点では、いわゆる内部事情を優先してもいけます。

ある程度決まったものを繰り返し、大量に作り続けられればいいという考え方に拠るからです。

ですから、マス・プロ視点では、内部的に最も効率が高い仕事の”手順”を考えますし、それは自然なことでもありました。

 

ただし、この考え方のままでは、市場変化に対応したマス・カス、マス・ラピのやり方と乖離が生じ、現場はストレスを感じます。

現場のストレスを解消するのに、仕事の流し方を見直す必要があるのです。

 

・工程設計

・ロット設計

これらが仕事の流し方を決める2つの設計です。

 

詳細はセミナーやご指導のなかでご説明していますが、これら2つの設計の定石を現場へ当てはめます。

このあたり、唯一、絶対の解はありませんし、まさにケースバイ、ケースです。

だからこそ、どのような現場にも独自の強みを生み出す可能性はあると考えています。

 

・工程設計のキーワードは工程統合と工程分割。

・ロット設計のキーワードは加工ロットと運搬ロット。

こうしたキーワードで皆さんの現場を見直して下さい。

マス・プロからマス・マス/マス・ラピへ現場を変える観点を見つけられるはずです。

 

手順計画を現場といっしょに考える仕組みを考えませんか?

 

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製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)