人の作業はいかにして機械に置き換えられたか|元トヨタマンの目
トヨタは次の3つのステップで考えた。
第1ステップ……「人の手の動き」を段階を追って機械化する
第2ステップ……「人の頭の働き」を機械化する
第3ステップ……「人の手の動き」と「人の頭の働き」の両方を必要とするものは機械化せず人に任せる
そして具体的には次のようにしていった。
■「人の手の動き」の機械化の階段
1.切削……1人1台
2.刃物送り……1人1台
3.加工終了時機械停止……この段階で1人2,3台を受け持てるようになる
4.原位置復帰……この段階以降、ニンベンのついた自働化により1人多台持ちが可能になる
5.ワーク取外し
6.ワーク取付け
7.機械起動
■「人の頭の働き」……ニンベンのついた自働化
異常が発生した際とか、品質チェックのタイミングとか、刃具交換のタイミングなどを機械が感知し、自動停止するとともに、あんどんを点灯させて人を呼ぶ。
■「人の手の動き」と「人の頭の働き」の両方を必要とする作業
異常発生時の対応処置などだ。これらは機械化を考えず、すべて人に対応させるようにした。
ここまで機械化してしまうと、非常にコストが高いものになってしまうし、人のコントロールが効かなくなる。
韓国のメーカーへのセミナーの際、次のような質問を受けた。
「トヨタの工場より、ホンダや日産の工場の方が機械化が進んでいると感じるのだが、どうしてか?」
この質問に対しては、上記のように回答した。
GMも以前、完全自「動」(「働」ではない)化工場を作ったが、結局うまく稼働せず失敗した。
やはりトヨタのような徹底的な人の作業との関連を無視して、どーーんとすべて機械化してしまったから、そうなったのだと思う。
ところで、トヨタのこの考え方を裏付ける取って置きの事実があるから、読者に『こっそり』お教えしよう。
実はトヨタには「トヨタ式工数低減法」という秘伝がある。
その大項目は次の通りだ。
1.トヨタ生産方式の基本的考え方
2.工数低減と原価低減
3.工数低減と品質
4.工数低減と安全
5.工数低減と人間関係
6.工数低減活動の進め方
7.工数低減と監督者
上記の通りすべて、工数低減(人作業を減らすこと)とからめて発想されているのだ。
さらに、世界で唯一、「労務費」と「生産量」の相関関係を導き、労務費の変動予算管理・能率管理を実施しているのだ。
自分で言うのもなんだが、トヨタとは本当にすごい会社なのだ。
ここまでくると、これらをすべて作っていかれた大野耐一は、実は「神」ではないかと思うほどだ。
日本企業もアンチトヨタのプライドをすてて、中国や韓国のようにもっと必死になってTPSの全体像の習得に取り組んでほしいものだ。
「トヨタ赤字になったいいきみだ!」などと言っていてはだめですよ。
すぐ巨人は盛り返しますから。