中小企業の省エネ対策の実態は?日本商工会議所、初調査を公開
日本商工会議所は1月31日、昨年初めて実施した中小企業の省エネ対策などの実態調査について速報を発表し、この速報をもとに、経済産業省と連携し取組みを促進させるアプローチ策の提言を行いました。
結果は、「投資を伴わない取組みであっても実施率は低調」「コスト削減が動機」「まずは温暖化対策の取組内容や方法、メリットの理解促進から始める必要」「ある程度取組みを実施している中小企業ではCSRが動機となり、専門的支援を望んでいる」など、これまで語られてきた中小企業の実態が裏付けられた格好になりました。
アンケート結果速報の概要
回答企業の属性
企業規模
資本金1000万円以下、従業員20人以下の企業が約半数
業種
製造業や小売・サービス業が比較的多い
地域ブロック
人口分布と比べ関東・関西以外の地方の回答数が多い
社内体制
省エネ担当者を置いている企業は約4割
温暖化対策の認知度
2030年目標は約8割が認識、 一方「COOL CHOICE」は6割弱が「知らない」
投資を伴わない取組みや投資効果の分かりやすい取組みの実施率が高い
企業規模が大きくなるほど取組実施の割合が高い。
「リサイクルの推進」や「エコドライブ」は、従業員数十人の中規模企業における実施割合が最も高く、企業の規模が大きくなると実施割合が下がる傾向にあることから、運用ルールを徹底しやすい規模があることがわかります。
運輸業は、工場を有する製造業や店舗を有する小売業・サービス業とは、取組内容に相違があります。(「エコドライブ」や「次世代自動車」など車両関連の取組みが多い)
また、今後実施したい取り組みについても、投資効果が分かりやすく、比較的投資規模の小さい取組みの実施意欲が高い。
「投資規模の大きな取組み」や「他企業を巻き込んだ取組み」「各種機関が提供する省エネツールの利用」についても、実施意欲を持つ企業が一定数存在します。
小規模よりも、中規模クラスの企業の方が今後新たに実施する取組みが増える傾向にあり、 建設業では比較的多様な取組みの実施意欲が高いです。
省エネの動機はコスト削減
「コスト削減」が主な動機。
企業規模が大きく、温暖化への関心が高くなるほど、また都市規模が大きくなるほど、「CSR」を動機とする企業の割合が高くなり、特に卸売業・運輸業で高い傾向にあります。
課題は「理解不足」
「取組み内容や方法の理解」が不足している状況。
企業規模が小さいほど、また都市規模の小さい地域でも、「取組み内容・ 方法の理解不足」 を課題に挙げる割合が高くなります。
「費用」と「専門人材」が足りない
結果として、温暖化対策に取組むための「費用」と「専門人材」が足りていない状況であるとわかりました。
規模が小さい企業は、「費用面」での課題に加え、「取組内容の理解」を課題に挙げる割合が高い。中規模企業は、「先進事例の把握」や「外部からの助言・支援の不足」を課題に挙げる割合が高く、企業規模が大きくなるほど「専門人材の不足」を課題に挙げる割合が高い。
また、温暖化問題への関心が高くなるほど、「外部からの助言や支援」を期待する割合が多くなり、関心が低くなるほど、「費用の捻出」や「取組みの内容・メリットの理解」を課題に挙げる割合が多い。
分析結果から考えられる効果的な方法は
日本商工会議所では、この分析結果を踏まえ、「まだ取組みを実施できていない中小企業」と「ある程度の取組みを実施している中小企業」それぞれの省エネ対策の実施レベルにより、各中小企業の実態やニーズ、および地域の実情に応じた環境行動に関する取組リスト(環境行動計画)を策定する予定です。
商工会議所(事務局)ヒアリングから得られた中小企業へのアプローチ策
地域の中小企業と積極的にコミュニケーションを図り、会員企業に対し温暖化対策の取組みを推進している複数の商工会議所(事務局)から、訪問調査(ヒアリング)を通じて、中小企業へのアプローチ策に関する貴重な意見(ヒント)を得ました。
1.省エネの取組みによるメリットの「見える化」が必要
- 省エネ診断(客観データ)の結果活用から始める意識啓発は効果大
- 企業の経営改善にも役立つストーリー展開を提案
- 温暖化対策に即効性なし。諦めず継続して取組むことが重要
- 取組みを通じて新たなビジネス展開が期待できる動機づけも有効
- 情報発信には紙媒体が効果的。地元メディアの活用も有効
- 地域金融機関を通じた経営者へのアプローチも有効
2.「伴走型」の支援、身近な事例紹介や事例共有が有効
- 会員企業と密なコミュニケーションを図りながら、ニーズをきめ細かく把握して進めていくのが有効(専門家とも適宜連携)
- 身近な企業の好事例は他の会員企業にとって関心が高い
- 地域中核企業を講師に招き、先進取組事例の勉強会を開催
- 温暖化対策の取組みを牽引していく組織体を設置するのも有効
3.実態に即した取組リストの策定
- 会員企業の実態やニーズに即した取組リストであることが必要
- 手が出せないような高いハードルを設定しすぎないよう留意
- 温暖化対策に対する意識啓発も取組リスト策定の意義
4.中小企業には平易な言葉で解説を
- 長期の温暖化対策の方向性を国全体で定着させることが重要
- 行政の施策への関心は高く、分かりやすい説明・資料が求められる
Apple社など「再生エネルギーしか使わない」という企業もあります。
資源の少ない日本で、今後生き残るためには、こういう省エネ活動をどんどんトライしていくことで10年後の会社としての資産に差がつくように思います。
出典:『中小企業の省エネ対策の実態は?日本商工会議所の初調査が公開』株式会社FAプロダクツ