中国ではトヨタ式がやり易い|元トヨタマンの目
北京にある、ある日系企業の工場を見せてもらった。そこの工場長は、次のような悩みを語っておられた。
「日本人なら1つ言えば全て理解してうまくやってくれる。例えば、『このボルト締めといて』と言えば、判断して必要なところを的確に締めておいてくれるが、こちらでは本当にその1つしか締めておいてくれない。言葉もうまく伝わらないし大変困っている」
この企業はすごい技術を持っており、日本での現場の定着率は抜群によい。したがって、作業者=全てマイスター(ベテラン熟練工)なのだ。
この点についてトヨタはどうであろうか。
トヨタも技能五輪などに毎年のように入賞し、技能向上にはお金と工数をふんだんに投入している。
このように熟練度合いは常に向上させるが、更なる要求がある。それは「熟練技能は徹底的にそれを解析し、標準化させて誰もができるようにせよ」ということだ。
言い換えると「カンコツをそのままにせず徹底的に顕在化させよ。例えばカンコツで調整していたものをカセット式にしておき一発でさしかえてしまう」とかいうことになる。
これは第2次世界大戦の頃、熟練工がいつなんどき徴兵されてしまうか分からないので、もしどんな熟練工がいなくなっても代行がいつでもできるようにしなければならない、という必要性が最初だ。
またトヨタ生産方式の進展で、生産量の増減で作業者が月単位で出入りするという状態におかれた。
常に新しい作業者が出入りすることになり、彼等を受け入れた場合、すみやかに仕事を覚えさせなければならない。
また受け入れる人数が大量のため、物理的にいちいち付いて教えていることなどできない。
ここで必然的に考え出されたのが、徹底的な文章化だ。いわゆる「標準作業票」だ。
監督者「これに書いてある通りに1度やってみて下さい」
新人「ここの部分がよく分かりません」
監督者「これはこうこうこういうことです」
新人「分かりました」
監督者「あなたに質問された今回の事項はすぐに標準作業票に書き込んでおきます」
このようにすればどんどん良いものになっていく。
そこでその工場長に次のように提案した。
作業者への指示は全て日本語と中国語併記の文章で行ない、口頭での指示はなるべく行わないようにする。
そのために工場長等現地スタッフの、今、頭の中にあることは全て文章にし貼り出すようにする。それは現地スタッフだけでは無理なので、日本本社のスタッフにも協力してもらう。
「ものづくり」を教えるのに言葉はいらない。
「文章化したマニュアル」と「実際の動作」を見せるだけで十分だ。
日本人も中国人も言葉を発することのできない障害を持っていると仮定して進めればいいのかもしれない。いわゆる「サイレント工場」だ。
この工場には機械加工工場とアッセンブリ工場があり、トヨタと同じだ。
26年間馴染んだトヨタ工場の状況とこの工場の状況とを頭のなかで比較して、その差異を1つ1つ指摘し、トヨタ工場へ近づける道筋を提案してみると全て納得していただけた。
あとはトヨタ式の地道な教育と日本本社、中国現場とタイアップさせた改善活動の進行フォローだ。
やはりここでも物づくりに対するトヨタ生産方式の普遍性を再認識することができた。そうでなければこの工場の人達を同意させ動かすことはできないはずだ。
来年は別件で毎月北京へ行かなければならないため、その日程にあわせて毎月訪問することにした。日本本社へも月のうち1日は訪問できる。
これで体制は整った。
「きちっとした方向性」と示せば「やる気」も湧いてくる。
いまその「やる気」もびんびんと感じられるので一機に進みそうな気がする。(W社長、S総経理、以上が今回の訪問の感想です。頑張りましょう)
ところで北京は本当に空気が悪い。
街中はおびただしい車の排気ガス、郊外の工場地帯でも暖房用の石炭の燃焼のにおいで臭い。挙句に、ホテルが喫煙ルームで、こびりついた臭いで夜半に目覚めて眠れなくなってしまった。
夜の天安門の上にはぽっかり満月が浮んでいるが、星が1つも見えない。今回は3日いただけなので、本来の姿かどうか分からないが小生の印象はだいぶ悪い。
今、日本にいる。
愛知県の東の端の豊橋という田舎町だ。空気はきれいで、星もいっぱい見える。空気がきれいなことがこんなにもすがすがしいとは今まで感じなかった。
日本人の皆さん、温暖化防止の数値目標は思いっきり高い目標を受け入れて、全員で徹底的にそれに向かって努力しようではありませんか。
そうすれば
①無駄な燃料を使わないのでお金が儲かる
②地球がきれいになる
③環境技術が向上し、他国で活用できさらに金になる
まさに一石三鳥です。
その他の北京での出来事
北京のタクシーはまずボラれる
帰国は朝8時20分の名古屋便で、同行はなし。W社長と朝6時にフロントで待ち合わせた。
そして社長がホテルの前でタクシーの運転手に中国語で声をかけた。
社長「北京空港まで今の時間いくらぐらいで行きますか?」
運転手「150元です」
社長「なにー! 150元! 今は早朝で渋滞もないし、そんなにかかるわけはない」
運転手「そんなこと言うなら乗せないよ!」
ホテルマン「どうしたんですか?」
社長「こいつが空港まで150元かかると言っている。こいつは詐欺だ。北京オリンピックもあり、当局も厳重にとりしまっているのにこの始末だ。ナンバーをひかえて当局に通報しろ!」
そして社長が他のタクシーへ行って、料金メーターを覗き込んで不正がないかをチェックしてホテルマンに、ナンバーをチャックしといてくれと頼んだ。
そしてそのタクシーへ私一人乗り込み、まだ夜も明けない北京の町をタクシーは爆走して北京空港へ着いた。
そして料金を払うと、何と90元だった。
地下鉄のよかった点
地下鉄に乗った。1つのホームの両側に上りと下りの列車が入ってくるタイプの駅だった。それぞれの側の柱に縦に駅名が全て書き込んである表示がはってあった。
上りの方の柱にはこれから列車が進んで行く駅名が黒色で書いてあり、逆に列車がすでに通ってきた駅名が灰色で書いてあった。下りの方のホームには、上りとまったく逆のように書いてあった。
これなら上り下りの間違いは起こらないだろうと感心した。中国の人もなかなかやるなあ。
店屋も衛生的だった
北京一の繁華街の横に、小さな食べ物の店が両側にぎっしり並んだ通りがあった。串焼き屋などはショーウインドウの中にきれいにいろいろなものが並べられて、客が好きなものを言えばその場で焼いてくれて食べられる。
その他の食べ物屋もショーウインドウの中に食品が置かれていて、客のツバキやホコリが付かないようになっていた。客のツバキが入ってしまうことに何も考慮していない日本のスーパーやコンビニのおでんなどの食品陳列方法より、よほど衛生的だった。
日本は中国などの食品を一概に非難するが、日本だって赤福や吉兆などに見るように人のことを非難しているレベルではない。
天安門広場
夜、天安門や天安門広場、故宮(中には夜で入れなかった)などを見学した。さすがにその広さと規模には圧倒されたが、想像していたほどではなかった。
江戸城、名古屋城、東大寺などで、日本人は圧倒させられるが、それと北京が私にとってはほぼ同じぐらいだったのだ。私にとっては、支配地域や人民数からみれば、中国の圧倒度合いの方が数十倍でなければ納得できない。
まあ、万里の長城などがあるから、総合すれば数十倍になるのかもしれない。これを機会に中国のいろいろなところを見学してみたいと思う。
中国語
中国発祥の漢字を使っているのは韓国と日本だ。
そのうち悲しいかな韓国は反日思想の影響からか漢字を使わなくなってしまった。漢字ということなら、中国と日本は親子・兄弟のような間柄だ。
もしアメリカ人が中国語をマスターするのを登山に例えて一合目から上らなければならないとすれば、日本人が中国語をマスターするのは七合目ぐらいからのスタートではないかと思う。
か一行
いずれにしろ世界で最も中国語を習得しやすい国は、漢字教育の徹底した日本であることに間違いない。
なのに教育では何もやらせない。あの言語と言うよりは「記号」とでも言った方が似つかわしいイングリッシュ一辺倒だ。
中国語、韓国語を勉強し始めた小生からみると、このことはいかにももったいない。
初等教育でそれぞれの入門ぐらいはやったらどうか。種さえ蒔いておけば、国民の内のどれだけかは必ず深みにはまるであろう。
そのようなことを画策することが教育行政ではないだろうか。
韓国語・・日本語・・文法が同じ
中国語・・日本語・・漢字を使用
この両方をやれば母国語である日本語がより深く理解できるのは間違いない。
まあ人のことはどうでもいい。
自分は必ずこの二ヶ国語をものにして、文学的・文化的・歴史的嘉悦に浸ってやるぞ!