中国でのコンサルティングの憂鬱|元トヨタマンの目

中国でのコンサルティングの憂鬱|元トヨタマンの目

<トヨタの機械化の考え方>

①すべて人によるライン……設備投資額小

②機械化が安価にできる部分だけ機械化し、あとは人で対応するライン・・・設備投資額中

③全面機械化ライン……設備投資大

①は人件費の極めて安価な国でのライン
②は人件費が中くらいの国でのライン
③は人件費が極めて高い日本でのライン

 

ライン化自体の基本思想はまったく同じ。
1個流しラインにして、品質チェックは自主点検、順次点検の思想のもとポカヨケを随所に工夫して、工程内で不良は発見し、見つけ次第ラインを止め、対策を打つ。

日本は人件費が昔から極めて高いため、「機械化する」ことと「従来どおり人手でする」こととを比較すると、ほとんど2~3年で機械化投資を回収してしまったため、どんどん機械化が進んだ。

機械化とともに不確実な人の判断が排除され、1個ずつの製品が機械間を移動していくたびにポカヨケを工夫することができ、品質もどんどん向上してきた。

 

しかし、中国では人件費が思いっきり安い(今でも日本の30分の1)。
したがって機械化の設備投資の回収ができないため、人手でやらしておいた方が安いということで、シーラカンスのような機械に人が張り付いている。

こうなると品質も人に頼るしかなくなる。
ホモサピエンスとは元来いい加減な生き物だ。
結局、品質の確保が難しくなる。

 

日本は上記の通り、ほとんど無人化を達成している。
その日本が無人化設備で中国へ進出して来たら中国はどうなるか。
人件費が安かろうが関係なくなるのだ。

中国の人達にこのあたりをきっちり説明して、日本が歩んできた道をできるだけ短時間で歩いて、いや、突っ走っていくしかない。

<日本企業でも後続組は中国と変わらないが……>


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。