不断の変革で存続と成長を実現している老舗企業
経営者は5~10年程度の長期間でとらえる変化を認識し不断の変革の実行する、という話です。
工場の現場で3年前と変化したところ、どれだけありますか?
工場での生産活動を維持し付加価値を生み続けることが工場経営のキモです。
外部環境の変化を認識して、受注を獲得し続けられるよう現場を変えます。
経営者は5年~10年の長期の変化に注目し、事業の再定義をします。
1.外部環境の変化をとらえる
会社を取り巻く環境は変化します。
企業が事業を進めるにあたっての前提条件です。
工場経営で経営者の方が腐心することは、生産設備を稼働させるための受注量を確保し続けることではないでしょうか。
ですから、工場経営では外部環境の変化を的確にとらえることが欠かせません。
設備投資して製造設備を工場へ導入したら、一括払いであれ分割払であれ購入費用分の現金が会社から出ていきます。
加えてメンテナンス費用、さらに、もし設備を借入金で購入していれば支払利息という形でもお金は出ていきます。
減価償却費は節税効果をもたらす云々は受注が確保され、設備が当初計画通りに稼働している場合にいえるのであって、まずは、設備を稼働させるに必要な受注を確保していなければ話になりません。
市場動向に合った生産設備であれば、それはお金につながる付加価値を生み出す源泉となりますが、外部環境が変化し見通しと異なる状況に至れば、採用したのに全く働かない従業員へと変貌します。
工場経営では市場動向、技術トレンド、競合の動き等、様々な情報を分析し、外部環境の変化に合わせて、どのように現場を変化させるか意思決定することが極めて重要です。
そして、生産活動を維持する状況を作り、付加価値を生み続けます。
設備を有して商売する工場経営の要諦は、「外部環境に合わせた受注活動」と「変化に対応した生産活動を可能にする現場」を維持し続けることです。
その意味で、作れば売れた時代とは異なり、生産設備に求められる機能が変化していることにも気が付くべきかもしれません。
(つまり多品種少量生産向けの設備、汎用性の高い方が小回り利くかも)
自動車部品の工場に所属していた時よく先輩に「現場が3年間何も変わらなかったら、それは現場を担当している技術屋の責任だ」と言われました。
当然のことですが、現場を変えること自体が目的ではありません。
外部環境が3年間不変であることはあり得ないので、環境変化に対応しようという意思があれば、結果として3年間で必ず現場のどこかに手を入れざるを得ないはずだ、ということを先輩は伝えたかったわけです。
今から20年以上も前の話です。
今はIoTや人工知能がこれからどのように現場へ生かそうか、ということが話題になっている時代です。
変化のスピードはますます速まっています。
とにかく、まず、外部環境の変化を敏感にとらえることです。
2.外部環境を認識したら、さてどうする?
工場の生産活動を維持し付加価値を生み続けることが工場経営のキモです。
工場は動いてナンボです。
造るモノがない現場ほど寂しいものはありません。
リーマンショックや東日本大震災で稼働を停止した現場の雰囲気を思い出します。
売上高のめどが立たない状況でモチベーションを維持するのに苦労しました。
経営者の方は、現場の生産活動に影響を及ぼす様々な外部環境の変化への感度を上げて下さい。
そして、「変化」を感知する際、外部環境の変化には2種類あることに留意します。
・1年~2年程度の短期間でとらえるべき変化
・5~10年程度の長期間でとらえるべき変化
ここで、南の島を想定します。
一時的なスコールのような大雨への対応策と地球温暖化で徐々に潮位が上がってくることへの対応策は根本的に違います。
一時的なスコールのような大雨へは、避難用の建物を島の各地へ建設すれば解決しそうです。
一方、潮位が上がってくることへの対応はそう簡単ではありません。
予測される潮位の上昇分、国土に盛り土して高さを増すか、いっそうのこと島の住民全員が別の島へ引っ越しをして将来予想される困難を回避するか。
後者の意思決定は、時間を味方につけながら島のトップがするべきものです。
ここ1年~2年ですぐに支障が出るわけではないですが、計画的に手を打たねば対応の遅れを認識した時は致命的な状況に陥ります。
工場経営でも特に5~10年程度の長期間でとらえるべき変化を重視すべきです。
変化のスピードは遅いですが、事業活動の再定義が必要となる程の影響力の大きな変化となるからです。
短期間での変化への対応とは異なり、長期間での変化への対応は経営戦略に密接に関係するテーマが多く、その意思決定は経営者にしかできません。
経営者の方が長期的な視野で変化を認識しました。
さて、どうしましょうか?
2つのことを考えます。
1)既存事業を下記の3つに分類する。
・残すモノ ・変えるモノ ・捨てるモノ
2)将来の成長に向けて新たなモノを加える。
経営者の方は将来を見据え、上記の選択をします。
つまり事業活動の再定義です。
3.環境変化へ対応して成長し続ける老舗企業の事例
ミツカンホールディングスは1804年創業の老舗の食品メーカーです。
「味ポン」で有名です。
祖業は食酢やポン酢ですが、20年近く前に本格参入した納豆も現在の稼ぎ頭です。
さらに14年6月には英欄ユニリーバから北米のパスタソース事業を2000億円超で買収しました。
その結果、2015年3月~8月期の連結売上高は1215億円と前年同期に比べ3割増え、海外比率は56%で前年同期対比13%増でした。
200年以上の老舗のブランドや伝統に安住せず新しい分野にも挑み、M&Aで海外進出も果たす積極的な経営は社内人財を大いに活性化しているはずです。
創業家の8代目当主でミツカン会長の中埜和英氏は下記のように語っています。
「永続的に企業活動を続けるのに1番大切なのは、その時代の環境と身の丈にあわせて変えていくことだ」
米ゼネラル・エレクトリック(GE)は発明王トーマス・エジソンによる創業から100年以上の歴史を重ねています。
そのGEも事業内容を大胆に組み替え変革を続けています。
かってGEの利益の半分を稼いだ金融事業からほぼ撤退し、また、伝統ある白物家電の事業を中国のハイアールに売却することを2016年1月に発表しています。
その一方で、仏重電大手アルストムを買収しています。
さらに、GEは「デジタル製造業」という新たな理念も打ち出しています。
ドイツが提唱してるインダストリー4.0と同様に情報通信技術を活用した、インダストリアル・インターネットです。
GEのジェフ・イメルト最高経営責任者は、これまで消費者向け市場で起きたネットによる革命が、次は産業界にシフトすると考えています。
GEとしては、デジタル化で製造業の生産性を高めるサービスを強化するようです。
(出典:『日本経済新聞』2016年3月8日)
ミツカンホールディングスもGEも経営者自身が長期的な変化をとらえ不断の変革を実行しています。
事業の取捨選択は経営者にしかできない重要項目です。
会社の事業の再定義であり、存在意義の再定義です。
こうした戦略的意思決定に誤りがあってはなりません。
現状維持も「座して死を待つ」ことですし、誤った選択も企業の存亡に関わります。
そのためには長期的な展望で5年~10年を見通す確かな目を持つことが欠かせません。
ただ、不確実性の高い時代です。
情報を集めることは重要ではありますが、そこから正解を必ずしも導けるわけではありません。
こうなると最後は経営者の人生観や歴史観、会社をこうしたいという熱い気持ちのような「経営者の想い」次第となってきます。
将来を見据え、工場の現場やその家族が将来に向かって豊かな生活を送り、この会社に入ってヨカッタと感じてもらえるシナリオを書きつづけたいです。
そのために、外部環境に合わせた不断の変革をひたすら続けます。
まとめ。
工場での生産活動を維持し付加価値を生み続けることが工場経営のキモである。
外部環境の変化を認識して、受注を獲得し続けられるよう現場を変える。
経営者は5年~10年の長期の変化に注目し、事業の再定義をする。
経営者は5~10年程度の長期間でとらえる変化を認識し不断の変革の実行する。