ロット生産を続けていると・・・|元トヨタマンの目
トヨタもトヨタ生産方式導入前は、全工程でロット生産を行っていた。それを段取り改善や1個流し化などによって進化させてきた。
機械加工の設備などでは、長い加工工程は、例えば1分で1台生産しようと思ったら、工程順に並べた機械は1分加工したら加工を終えて次の機械に送るようにする。こうすれば、刃具交換・品質チャック・給油等で機械を停める以外は、稼動し続けることになり、可動率(機械を動かすべき時間に対して、実際に動かせた時間の比率)は85%ほどになる。設備投資がもったいないように感じるかもしれないが、これ以外の方法ではこの可動率を達成することはできない。
しかし一般の企業では、今だにロット生産のところが多くある。そのような会社では、ロット生産にあった自動設備を自分で設計して使っている。それは、できるだけ多くの工程を1つの機械に入れ込み、さらに自動機なるがゆえにロットの製品をもその機械内にセットできるようにする。小さな製品を造るのに、馬鹿でかい機械になってしまい、段取り性は極端に悪くなってしまうし、マシンサイクルタイムも超長くなってしまう。
ボタンを掛け違うと、とことんいくところまでいってしまう。
しかしそれでも21世紀の今まで飯が食えてきたということは、その業界全体がぬるま湯の中にいて、そのムダを消費者に負担させていたということだ。
またこのような体制の会社では「この設備はむちゃくちゃ高かったのだから、たくさん生産しなければもとはとれない。じゃんじゃん造れ!」ということになってしまう。
トヨタでは売れる物しか造ることは許されないのだから、「設備が高いから・・・」などという発想はまったく出てこない。また、トヨタ工場では、稼働により発生する費用のみが管理対象で、償却費などは埋没コストとして一切開示しない。償却費などは新車開発時の原価企画で死ぬほど検討されており、工場などはそのことは知らなくてもいいのだ。
経営者はこのあたりをきっちり把握して、的確な指示を出さなければならない。それがなければ「会社ゴッコ」になってしまう。失礼なことばかり言って恐縮だが、日本には「会社ゴッコ」の会社が実に多い。
元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社