ミャンマーその魅力と課題・タイ及び他のASEAN諸国と比較して
ミャンマーは軍事政権から民主化されて、ここ数年で急速に注目を浴びています。かつてはビルマと呼ばれ日本とも縁が深い国です。
歴史的に身近に感じるだけでなく近年「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるまでに経済成長が有望視されるまでの国になってきています。
歴史を紐解くと戦後70年が経ち、日本経済の飛躍的な発展と共に製造業の進出国も変遷してきました。
新たな工場を海外に建設する場合、恐らく東南アジア諸国(初期はタイ・マレーシア・フィリピンそしてここ数十年はベトナム・インドネシア)、中国、韓国が真っ先に頭に浮かぶことでしょう。
そういった国々の中でなぜミャンマーが有望視されているのか、その理由を探ってみたいと思います。
海外旅行では人気のスポットも、いざ仕事としてその国をみた場合、日本とは全く異なる歴史を持ち、文化も政治経済も大きく異なることに驚かされます。日本との違いだけでなく、東南アジア諸国間でも大きく異なります。ミャンマーも同様です。
隣国のタイと比較しても大きく異なります。日本から見るとミャンマーもタイも大きな違いはないだろうと考えがちになります。
タイに進出してうまく工場運営ができているからと言ってミャンマーでもうまく行くとは限りません。また逆にタイでうまくいかなかったからミャンマーでもうまく行かないと判断するのは早計です。
隣国と様々な違いから、リスクと可能性を知ることは、その国の置かれた状況を具体的にイメージするには良いでしょう。
文化
ミャンマーは敬虔な仏教徒(南方上座部仏教)であり、その面ではタイ・カンボジア・ネパール・スリランカ・ラオスと同様です。
つまり大乗仏教である日本人やベトナム人と比較した場合はより仏教が浸透しているとも言えます。
タイのバンコクは既にASEANでも比類なき商業地・工業地ですが、そのイメージはタイのLocal Areaがミャンマー全般に似たところがあります。また他のASEAN諸国と同様、一般的には日本人に対する感情は良いと思います。
ASEANで考えると戦中の激戦区であったフィリピン・インドネシアは当初は厳しい状況ではありましたが、今は他のASEAN諸国と同様になってきています。
一重に日本の平和と戦後のODAを含めた包括的な関係がその感情に寄与しています。また、よく私が喩えにあげる日本人に一番似ているところは「いまここで世界の色々な人種で会議を開いた場合に最初に手を挙げるのは中国人・アメリカ人・インド人であり、人の様子をじっと最後まで観察して手を挙げないのはミャンマー人と日本人である」ということです。
つまり個人主義ではなく家族主義が基本の概念を持っています。競争よりも協調という考えです。
逆に今後改善すべき点は、先生や上司が右と言えば右、左と言えば左といった教育を約6年前まで基本行って来たため発想や独創力に欠けるという点です。
日本に対してはやはり技術や品質面で学びたいという考えをもった人が多いように感じます。
教育
技術者が元々生まれた時の能力はそれが日本人でもアメリカ人でも中国人でもまたミャンマー人も全く変わりません。
特に技術者に必要な数学や物理といった科学的や論理的な思考を重視する基本的な事は全く同じです。ですので、環境が全く同一と仮定するならば、技術者の数はその人口に比例するのは当然でしょう。
ただ、文化面で述べたとおり、「先生の言うことが100%正しい」といった教育・研修を進めた結果応用力にかけている点があります。
またパソコンやインターネットの普及率がまだ低いので、大学の授業だけではなくダブルスクールでそのような資格を取る人も少なくはありません。
特にここ数年のネットワークインフラの大幅な改善で1台/人の携帯台数を超えて、周回遅れの状況が先進国と同じような環境になってきたのも朗報です。
基本小学校の3年から英語を学習しているので概ね知識階級でなくてもある程度の英語はできる環境にあり、インターネット経由で欧米の情報を取得する速さは日本の比ではないのでその点でもそれは期待できます。
第二次世界大戦で占領されていないタイは英語の能力で全般的にミャンマーに遅れをとっているのは事実です。
また日本語についてはアルタイ語族であるミャンマー語(他にバングラデシュ/ネパール/スリランカ/モンゴル/韓国も同様)の語順が日本と同じことからタイやベトナムそしてカンボジア人よりもはるかに早く習得できるところがあり、近年特に日本語学校の人気が高いです。
社会インフラ
電力・水・エネルギーといった社会インフラはその整備に時間がかかることもありますが、着実に一歩ずつ前進していると言えます。
特に日本政府が力を入れているティラワSEZは既に三期工事が始まり、多くの日系製造業が進出してきています。
また、ミャンマー政府が地方での産業育成に力を入れはじめているので、日本の中堅・中小製造業の中では人材獲得で競争が激しくなると想定されるティラワSEZ以外でも進出を検討しているケースもあります。
ネットワークは先述通りかなり改善はされているものの地方はまだまだその容量やスピードも遅いので今後のより早い整備が望まれます。
政治
現政権に変わり政治的なリスクはある程度は下がっていますが、その真価を問われるのはここ数年でしょう。
当然前政権と比較して国民の人気は根強いですが2017年11月から施行される新会社法でかなりの規制業種がなくなることから、海外からの投資の飛躍的な増加が期待されており雇用や給与の改善といった良い点から地場産業の衰弱化といった二面性が危惧されています。
特に今まで政府関係で恩恵のあった非近代的な経営スタイルの企業はある面その存亡にかかわるような事態になる事も想定され、まだ燻っている民族問題が悪化する恐れもあるかもしれません。
経済
ASEANでの貿易自由化が進んでおり、大手や中堅・中小製造業を問わず、西のインドやバングラデシュ、北東の中国、南のタイに囲まれたミャンマーに拠点を作ることは今後更に増えることが想定されます。
本年度右ハンドルの中古車の輸入が本格的に厳しくなったミャンマーは従来95%の車が日本車(それも大半が中古車)でした。
これは先行きを考えるとタイから出やすいダーウェィSEZでのタイの自動車産業との連携による大規模なノックダゥンの可能性を示唆しているかもしれません。
まだ途中の峠の整備に10年の月日がかかるとは言われていますが、意外に早くそれが訪れるかもしれません。
2017年度GDPは約7.5%と言われており、先ほどの新会社法の施行により欧米を含めた投資が加速する方向にはあります。
もちろんタイに追いつくのにはかなりの時間がかかるとは考えますが、労働者の賃金やLogisticsを含めた製造コストといった点では正に今投資のTimingを考える時期かもしれません。
もちろんミャンマーの国を知るにはもっと多くの情報が必要かもしれませんが、これから海外進出をする上で、興味を感じ取ってもらえたらと思います。
さらに知ることで大きな可能性も見えてきますし、具体的なメリット、デメリットも含めて判断材料も揃うことでしょう。
※本記事は、グローバルイノベーションコンサルティング株式会社 代表岩永様に協力をいただき作成しております。
グローバルイノベーションコンサルティング株式会社ホームページ
出典:『ミャンマーその魅力と課題・タイ及び他のASEAN諸国と比較して』株式会社FAプロダクツ