マス・カスタマイゼーションで付加価値を拡大させる
付加価値を拡大させるモノづくり現場のイメージ、浮かびますか?
将来の工場の姿を描いていますか?
「今」のままではダメだと思ってはいるけど……。
何をどのようにして、具体的に考えればイイのかわからないなぁ。
一度、じっくり考えたいけれど、なかなかそうする時間もきっかけもない。
モノづくり工場の将来像、どのような切り口で考えるのだろうか?
製品仕様の観点から「マス・カスタマイゼーション」の切り口で現場のモノづくりを眺めてみることも考えるきっかけになります。
1.存続と成長には高付加価値製品の開発と生産が欠かせない
消費者の嗜好の多様化と希望する仕様・品質レベルの高度化の流れは、今後も加速されていくことが予想されます。
「そこそこ仕様」の大量生産品が、今後も継続して国内で生産される機会はあります。
ただ、いわゆるコモディティー製品の生産拠点は、ますます、ドンドン、海外の新興国へ移っていくことが予想されます。
中国に加えて、いよいよ東南アジアも本格的な海外の生産拠点になりそうな状況ですし、さらにアフリカ大陸の国々も今後、国力を上げ、モノづくり力を高めてきます。
コモディティー製品の生産拠点候補はグローバルに増えそうです。
いずれにしても、価格競争が事業存続の論点となっている製品では、競合先がグローバルにどんどん増えこそすれ、減りはしません。
したがって、存続と成長には、価格競争を回避できる高付加価値製品の開発と生産が欠かせません。
2.消費者の嗜好の多様化と仕様・品質レベルの高度化が進む
そこで、昨今、しばしば取り上げられているのが、マス・カスタマイゼーションです。
顧客要望に合わせたカスタマイズ製品を、大量生産と同じような生産性やコストで生産します。
多品種少量化生産を極めた先にある姿です。
下記は2014年の国内のカスタムメイド市場を推計したグラフです。
(出典:三菱総合研究所推計『日経ものづくり』2015年2月号)
現時点でも意外と多くの分野で、オーダーメードの要素を含んだ製品が出回っていることに気づきます。
住宅が突出していますが、なるほど考えてみれば、注文住宅は自分の夢を叶える高額カスタムメイド商品の代表的なモノです。
妥協せず、“こだわり”たくなる商品です。
さらに、衣食住のうちの衣と食に関しても“こだわり”を持っている消費者は多いです。
3.東京モーターショーと東京オートサロン
以前、自動車業界に関わっていたこともあり、自動車業界のカスタム化の流れも気になります。
国内の自動車展示会では、東京モーターショーが有名です。
2年に一度の割合で開催されています。
そして、それとは別に、毎年東京オートサロンというカスタマイズ車を対象にした自動車展示会が開催されています。
「チューンドカーの市民権を勝ち取る」というコンセプトで、1983年に始まった展示会です。
東京モーターショーと東京オートサロンの入場者数を比較します。
東京モーターショーの入場者数が2015年に減少したのに対して、
東京オートサロンの入場者数は増加傾向を維持しています。
さらに、1日当たりの入場者数に着目しても、オートサロンの方に勢いがあります。
2013年に4,000人/日程度上回る状況だったのが、
2015年では20,000人/日にまで入場者数の差が拡大しています。
また、2016年東京オートサロンの模様を報告した記事で、興味を引いた点が2つほどありました。
- 自動車業界の技術トレンドである「自動運転技術」はどこ吹く風。
- カスタマイズの面白さに加えて、ドライビングの楽しさを盛んにPR。
この状況から考えると、自動車を移動手段と同時に「コト」を与えてくれる楽しい商品と捉えることが、過去にも増して大切なようです。
東京モーターショーと東京オートサロンのどちらの展示会にも自社製品を出展した経験があります。
それぞれの展示会は開催趣旨が違うので、展示の仕方も変えます。
モーターショーは製品機能:設計エンジニア向け
オートサロンは見た目:設計エンジニアに加え一般消費者向け
とにかく、オートサロンは華やかで、面白さや楽しさを伝える展示会です。
コンパニオンの人数も多く、それを狙ったカメラ小僧が入場者数を上乗せしているという話もあるくらいです。
こうしたカスタマイズ商品への興味は今後も拡大していきそうです。
商品の基本性能もさることながら、多様な“コト”に応えて商品の差別化を図る。
高額商品になればなるほど、せっかくならば、自分好み商品が欲しい!! となります。
東京モーターショーはトヨタや日産、ホンダをはじめGM、VW、ルノー、フォード等世界の大手自動車メーカーが主役です。
一方、東京オートサロンは大手メーカーも出展していますが、中小カスタマイズ専門事業者が多数、展示しています。
東京オートサロンにおいては、中小カスタマイズ専門事業者の方が個性的で面白い車を出しているなぁと個人的には感じます。
きめ細かなニーズやウォンツへの対応は、小回りの利く中小企業が向いているということではないでしょうか。
どうせ汚れるのに、なんでここにお金をかけ、ここまで手を入れるの?というような商品・仕様もみられます。
こうした“嗜好品”は、一旦気に入ったら、欲しいものは欲しい!! となります。
こうなると消費者にとって価格は度外視です。
4.自社工場に当てはめて将来像を描く
下記は、マス・カスタマイゼーションの実現時期についてのアンケート結果です。
「個人の身体的な特徴や嗜好などに応じて個別最適化した、完全カスタマイズ製品を低コストで生産・供給することが幅広い製品で当たり前になるのはいつか」について、907名のメーカー関係者等に回答してもらっています。
(出典:『日経ものづくり』2015年2月号)
「6年以降、10年以内」が20.3%、「11年以降、20年以内」が34.3%。
6~20年後に予測するメーカー関係者が多いようです。
つまり、10年後にはなんらかの動きがはっきりするのかもしれません。10年後なんて、あっという間です。
我々中小企業モノづくり工場も、予想される変化に対応できるよう足腰を強化しておくべきです。
今後、車や衣食住等をはじめ多くの製品で、消費者の嗜好の多様化と希望する仕様・品質レベルの高度化が進みそうです。
自社製品に当てはめたら、どのような製品ラインアップになりますか?
どの程度、製品仕様の幅が広がり、深さが深くなりますか?
そして、生産性を落とさずにそれらを生産しようとしたら、どのようなライン構成になりますか?
また、それを実現するための課題はなんですか?
自社のことは意外と気が付かないことも多いかもしれません。
外部の専門家に客観的に見てもらってアイデアをもらうのも手です。
現場含めてワイガヤを実践するのも良いと思います。
まずは、考え始めることです。
まとめ
モノづくり工場の将来像、どのような切り口で考えるのだろうか?
製品仕様の観点から「マス・カスタマイゼーション」の切り口で、現場のモノづくりを眺めてみる。
マス・カスタマイゼーションの観点から付加価値拡大を考える。
出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所