マクロン氏のもう一つの顔とは?新大統領でどうなるフランス製造業

マクロン氏のもう一つの顔とは?新大統領でどうなるフランス製造業

アメリカ、韓国に続き、フランスでも新大統領が誕生しました。

エマニュエル・マクロン氏

です。

マクロン新大統領は元銀行エリートで39歳という若さと、24歳年上の夫人などで話題になっていますが、かたや経済や製造業の観点から見ると、なかなか興味深い人物です。

フランス版インダストリー4.0の旗振り役

産業、製造業のデジタル化の各国のコンセプトとしては、ドイツのインダストリー4.0、アメリカのインダストリアルインターネット、中国の中国製造2025等があります。日本でも先ごろ産業が目指す姿として「コネクテッド・インダストリー」に決まりました。

フランスにも同じようなものとして L’Industrie du Futur (産業の未来) があります。いわばフランス版インダストリー4.0で、その推進役のコンソーシアムには3万3000社が参加しています。

低迷するフランス経済と産業を活性化するため、産業をデジタル化していこうという国家的な取り組みですが、それをオランド前大統領・ヴァルス内閣の元で主導したのが、経済・産業・デジタル大臣だったマクロン氏でした。

参考:ビジネス+IT、「Industry of the Future」とは何か? フランスが第4次産業革命で目指す社会
参考:ITメディアMONOist、ドイツだけではない、フランスや中国でも進む製造業のデジタル化
参考:ダッソー・システムズ、仏政府プロジェクト「産業の未来(l’Industrie du Futur)」の共同推進役に

規制緩和に取り組む改革者

フランスは労働者の権利が保護され、その発言力や行動力も強く、従業員や業界のストが頻繁に怒り、交通や経済活動がストップすることもたびたび。労働生産性の低さや高賃金が災いし、経済低迷の一因になっていました。

それに対しマクロン氏は、2014年からオランド前大統領・ヴァルス内閣のもとで経済・産業・デジタル大臣を努め、経済改革を断行。「経済の成長と活性のための法律案」いわゆる「マクロン法」を提出。年5回だった店舗の日曜日の営業可能日を年間12回に増やし、長距離バス路線の自由化など、さまざまな規制緩和を実施してきました。

フランス経済は、アメリカ、中国、日本、ドイツに次ぐGDP世界5位。なかでも製造業は軍需産業や航空宇宙、通信産業などが強く、エアバス、ルノー、ダッソーなど世界的な企業がたくさんあります。ドイツと並んでEUの中心国であり、大きな存在感を持っています。

若さや経歴、プライベートな部分で注目が集まりがちなマクロン氏ですが、その手腕は実証済み。世界の産業がデジタル化に進むなか、それを主導してきた経験というのは非常に大きく、さらなる進展にも期待が膨らみます。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。