ボール盤改造・修理

ボール盤改造・修理

あるところから頂いた卓上ボール盤が使いにくいので、このタイミングで改造することにしました。

たいしたことではないので、一日見ておけば十分だと思ったからです。

使いにくい理由は、テーブルを一番上に上げても、ドリルチャックとの間が120mm位あいてしまいます。もう少し縮めたかったので、ラックの下に、スペーサーを入れることにしました。

二つ割にしていますので、針金を外せば取り出せますので、すぐに元状態に戻せます。

まずベースとテーブルを外します。安全面を考慮し、寝かせての作業としました。

テーブルを上下するウオームとピニオンギヤーです。

ハンドルを回すとウオームが回り、続いてピニオンギヤーが回りラックに伝達されます。

いたって単純な構造ですが、各部のバックラッシュを管理するのがみそでしょか。外回りは全て鋳物のままですので、どこで芯を見ているのでしょうか。

ウオームとピニオンギヤーを清掃しました。かなり切り子やスケールが入ってました。

 

この部分はしかたないでしょうね。ついでに、ウオームのかえりもヤスリで除去しておきました。

また、ウオームねじの切り始めと切り終わりの始末もしてありませんでしたので、グラインダーとヤスリでしておきました。

下の写真を見てください。

ウオーム軸を回すハンドルのクランプねじがひどくずれています。

笑ってしまいました。反対側にタップを立て直しました。

さて後は組み立てれば終わりです。スペーサーを入れた部分です。長さは、約100mmくらいです。

できた! とテーブルを上下してみると、二箇所ほど少し引っかかる部分がありました。

以前より気になっていましたが、無性に修理したくなり、あれこれ原因を探っていると、どうやらラックが原因みたいです。

とりあえずどこかが当たっているのだろうと、引っかかる部分にマジックを塗り、簡易的にあたりを取ってみました。マジックを塗っただけの画像です。

私は、簡易的にあたりを取る時によくマジックを使います。手軽で便利良いです。

組み立ててあたりを見ると、どうやら、ラックの歯底とピニオンギヤーの歯先があたっているようです。

ノギスでラックの下面と歯底との厚みを測ってみると、最大0.5mmも違ってました。

 

ラックの下面は、歪を取った為か、セーパーでメーカーが挽いたみたいです。

これは「まずい」と直感で思い、確認のため、ラックの歯先から歯底を測ってみると想像通り最大0.4mm位の差がありました。

ラックの歯を切った時に歪んで、下面を挽いて修正したなら、歯たけ(h)は同じはず。むちゃくちゃな歯の切り方ですね。

 

隣どうしの歯でも0.3mmくらい歯たけが違っているところもありますから。歯たけとは、歯先から歯底までの距離のことです。どんな切り方したらこのようになるのでしょう?

しかたないので、マジックのあたりと測定した寸法をもとに、ラックの歯底をセーパーでさらえることにしました。下の画像がその段取りです。

赤のマジックの部分の歯底をさらえます。

親父からセーパーでラックの歯を加工したのを聞かされてましたが、まさか自分がそれをするとは……。

歯底だけですが、思ったより、やっかいです。歯底の幅と同じ2mmのバイトを作り、歯に目視で合わせての加工となります。

 

ピッチがミリならまだましなのですが、1/4(2分)。つまり6.35mmなので、送りの目盛りもほぼ使えません。

老眼鏡に懐中電灯で一つ一つ合わしました。

この部分(少し引っかかる部分)の修理が予定オーバーでした。

 

一度手をつけると、気になる部分はそのままにはしておけなくなります。

機械好きですので気持ちよく動いてくれると嬉しいのです。

無事組み立ても終わりました。

テーブルを一番上に上げると、チャックとの間は25~30mm位になりました。これで使いやすくなりました。

 

機械をバラスといろいろなことがあり、面白いです。

今回の機械はだいぶ手を抜いた荒い仕事がしてありました。

その上、見える部分は精度に関係ないところでも、研磨してありました。

 

再度お断りしておきますが、この卓上ボール盤はあるところから頂いた機械です。

もらっておいて文句は言えませんね。いい勉強をさせていただきました。本人は、不具合の原因を調べる時など、けっこう楽しみながら作業してます(笑

機械は正直ですので、問題箇所を適切に処置すれば、機嫌よく動いてくれます。

そして、私の機嫌も良くなります。機械好きな変わり者ですので、調子の悪い機械とでも遊べます。

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/