フリーホイーリングのジレンマ:車載用同期コンバータ向けショットキー整流器の選択
特定の車載システムで採用されている多くの低電力および中電力レールでは、依然として同期バック・コンバータがコストと効率の間でバランスを図るうえで最適な妥協策です。
このアプローチにおいて暗黙的かつ重要なことは、バック・ダイオードの選択です。
しかし、多くの開発者が特に慎重にダイオードを検討しているわけではないため、選択を誤ると、効率の低下や消費電力の増加、電磁放射(EME)の増大、その他はさらに深刻な事態を招くおそれがあります。
では、問題のバック・ダイオードをどのように定義すればよいでしょうか。
ダイオードの動作は、自然転流と強制転流のいずれかに分類できます。
SMPS (スイッチ・モード電源)は通常、連続導通モード(CCM)または不連続導通モード(DCM)のどちらかで動作します。
CCMは強制転流(ハード・スイッチングとも呼ぶ)を使用していますが、メイン・スイッチのターンオン時には、ダイオードが負荷電流を流していても強制的にダイオードをターンオフします。
一方、DCMは自然転流(ソフト・スイッチングとも呼ぶ)を使用していますが、内部再結合によってダイオードのターンオフが自然に発生します。
代表的な車載向け同期バック・コンバータはCCM動作を想定して設計されており、その結果ハード・スイッチングを実行します。
ダイオードは整流とフリーホイーリングの2つの機能を果たします。
整流器として動作する場合は、電流パルスを出力フィルタに渡します。
フリーホイーリングとして機能する場合はメイン・スイッチのターンオフ後に、電流は継続的にインダクタに流れ込みます。
したがって、この状況におけるバック・ダイオードを、フリーホイーリング・ショットキー整流器ダイオードとして定義できます。
とりあえず、このダイオードを「ショットキー整流器」と呼ぶことにしましょう。
CCMバック・コンバータ向けショットキー整流器の選択に当たっては、同時に検討が必要な課題が存在します。
これが一連の矛盾するジレンマです。
普通に考えると、選択の際にDCパラメータを単純に検討する(つまり、順方向と逆方向)だけですむように思えます。
スイッチ・ノードで予期される最大電圧レベルより高い逆方向電圧レベルを有するショットキー整流器を選択します。
最小デューティ・サイクル時のピーク電流より大きいピーク順方向電流能力も求められます。
最小逆方向リーク電流も同様です(ただし、極軽負荷動作時以外、このような損失は通常それほど重要ではない)。
もちろん、効率最適化のために、可能な限り低い順方向電圧が望まれます。
ただし、順方向条件パラメータは、最初の課題を提示するだけです。
最小順方向電圧を達成すると、効率と消費電力が最適化されるのに対し、順方向電圧自体はダイ・サイズに反比例する関数で表現されます。
そのため、ダイ・サイズに反比例して上下する所要順方向電圧、ダイ・サイズに比例する整流器の価格、ダイ・サイズに比例する所要順方向電流要件、順方向電圧に反比例して増減する逆方向リーク電流、そしてダイ・サイズと熱インピーダンス要件に比例するパッケージ・サイズの間でトレードオフが発生します。
ここでも、技術的選択が大きな役割を果たす可能性があり、一般にプレーナ・テクノロジよりもトレンチ・テクノロジのほうが、高い順方向電圧およびリーク電流性能指標を提供します。
ショットキー整流器のAC特性は通常、EMEの問題が検出されるまでは無視されます。
その場合、高速ショットキー整流器のスイッチがより重要なAC特性になることは明白で、2MHzまでのいずれかのスイッチング周波数で動作する多くの車載SMPSは通常、出力段部品のサイズを最小化するために、ACスイッチング損失の最小化を重視します。
EMEと電力損失を低減するには、ショットキー整流器の接合容量の最小化が鍵になります。
これはスイッチ・ノードでの数MHzのリンギングは、数MHzの放射に相当する可能性が高いためです。
ただし、ここで別の課題、すなわちダイ面積が大きくなるほど接合部容量が増加するという課題に直面します。
EMEの低減やAC損失の最小化を図るうえで、この事実はおそらく負荷電流が小さいアプリケーションでは歓迎され、大きい負荷電流能力が要求される場合は歓迎されないことになります。
ここでも役割を果たすのがテクノロジです。プレーナ・テクノロジに比べて、トレンチ・テクノロジは広い温度範囲にわたって、より安定したスイッチング特性を実現します。
この事実は、高い周囲温度で動作する車載アプリケーションにとって重要です。
車載SMPS向けのフリー・ホイーリング・ショットキー整流器ダイオードは、各要素を対比させながら選択します。
最大デューティ・サイクル、スイッチング周波数、負荷電流要件、さらには周囲温度やヒートシンクの制約によって、どの要素が最も重要かを判断できます。
いずれにしても、適切なダイオードを選択しようとするとジレンマに陥ることは明らかです。