ニッチな商品で活用する知的財産権

ニッチな商品で活用する知的財産権

大量製造の時代は終焉

現代は大ロット生産・大量販売の時代ではなくなり、小ロット生産・少量販売の時代になったと言われています。

小ロット・少量販売だからこそ中小企業にとってはチャンスがあります。

また、市場が小さい中では知的財産権が有効に働くこともあります。

市場が小さければ参入してくる企業も限られてきます。

参入企業が少ない中でさらに知的財産権を確保できれば、小さくともその市場を独占できる可能性があるからです。

 

そうしたニッチな市場での事例として「鶏肉ささみ用筋取り具」があります。

ささみ肉の筋を取るための専用の包丁のアイデアです。

鶏のささみは低たんぱく低糖質でダイエットの食事に人気があります。

しかし、筋を取らないと味や食感が悪くなるのですが、この筋は肉にしっかりついているため取りにくいのです。

そこから生まれたのが「鶏肉ささみ用筋とり具」のアイデアで、写真にあるような形で二股のピンセットのような包丁となっていてささみの筋を挟み込んだあとに抜き取り筋を引き抜くのです。

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食鶏ささみ肉用筋取り具

アイデアを借りて製品化

このアイデアを使って製品化したのが豊田市足助町にある廣瀬重光刃物店です。

当店は、歴史ある足助町にあり鍛冶職人の廣瀬友門氏が7代目となる歴史のあるお店です。

同氏は、これまでもさまざまな新しいジャンルの刃物を作ることに挑戦してきました。

そして、今回は同じ豊田市の発明家から生まれたこのアイデアの商品化に取り組まれました。

 

アイデアと製造者とがマッチングする面白さの1つは、職人の技術と斬新なアイデアとが相乗的に活きることです。

長年培われた職人の技術がアイデアに加わることで作りやすさや使いやすさが格段に良くなります。

この良さは、特にアイデアが早期の試作段階であるほど顕著に出てきます。

クラウドファンディングの活用

ニッチな市場への挑戦には勇気が必要です。

十分な収益を確保できるか不透明な部分があるからです。

そこで私たちは、ニッチな市場に対する取り組みを実施する場合には、市場調査の意味も込めてクラウドファンディングを行うことを奨めています。

 

今回紹介した「鶏肉ささみ用筋取り具」は「豊田市開放特許活用による製品開発支援事業」の一環として進んだもので、製品化まではできました。

製造されている廣瀬氏は、あとは市場調査を行って市場に出していければおっしゃっていました。

 

ニッチな市場でも役立つ知的財産権。また、それをシェアして製品化するというのも時代の流れであると感じています。


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。