物流倉庫で荷捌き、ピッキングの自動化にロボット活用

物流倉庫で荷捌き、ピッキングの自動化にロボット活用

ロボットの普及を加速するには、より実用的で具体的なロボットシステムの提供が必須。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は8月、ユーザーニーズと市場化の出口を明確にしたロボット開発の支援に着手し、10のテーマに対し補助金の交付を決めた。その一つとして採択されたトーヨーカネツソリューションズ(東京都江東区東砂8-19-20、TEL03-5857-3126、柳川徹社長)は、どんな取り組みでロボット活用を進めているのか。開発部の篠原啓樹部長に話を聞いた。

-どのような作業に向けたロボット活用技術なのか?

当社は物流システムのスペシャリストとして、これまで多種多様な自動機、専用機で多くの作業工程を自動化・省力化してきた。唯一、自動化が難しい作業として残っているのが、流通や通販業界の物流センターなどでの、“荷さばき・ピッキング作業”だ。個別の荷物を次の工程に合わせて積み替える作業で、重労働で人材の定着率が低く、新たな人材確保も難しくなっており、昔から自動化が求められてきた。しかし、その作業内容は、取り出す、積む、別の場所に置くなど、個々の荷物によって作業が変わり、さらに荷物そのものの大きさや形状も異なる。人の判断力と柔軟性に頼る部分が大きく、自動化は難しいとされてきた。今回、この荷さばき・ピッキング作業に向けたロボット活用技術を研究している。

-具体的にはどのようなものを開発しているのか?

一つは「ミックスパレタイジング」。コンベア上を流れてくるサイズ・形状が異なる箱状の荷物を、隙間なくカゴ台車などに積み込んでいく作業だ。ここでは80%以上の高積載率で積み込めるシステム開発を行っている。もう一つが「ピースピッキング」。注文やオーダーに対し、ある特定の在庫商品の中から一つ(1ピース)の商品だけ取り出し、出荷箱に積み替える作業だ。ここでは小さく、形状が異なるものを確実に把持しなければならず、90%の精度で取り出せるロボットハンドシステムを開発している。

-実現に向けて難しい点、課題は?

高価な高精度のカメラや画像処理システムなど、コストをかければ実現することは難しくない。しかし当社は、普及を第一に考え、コストを抑え、物流現場で使えるものにしなければならない。限られたコストのなかで実現するというのが課題であった。

-どうクリアするのか?

荷物の多くは梱包されて箱の形をしている。また位置決めに関しても、数ミリから数センチ単位の精度で十分である。ある程度まで形が決まり、0.1ミリ単位の精度を必要としないというのは開発する上で大きなポイントだ。また当社は物流システムのスペシャリストとして、前工程・後工程も含めたトータルなソリューションを持っている。例えば、流れてくる際に箱の向きや位置がバラバラだと画像処理など複雑なシステムが必要だが、前工程で箱を整列させておけばそれもいらない。整列機械を入れることで、シンプルな構成で実現できる。こうした工夫でコストを抑えながら最適な物流工程を作ることができる。

さらに、すべての商品データに基づき順番を制御し、超高速で入出庫できる保管システム「マルチシャトル」のような装置・システムと組み合わせれば、最適な積み込みを実現できる。“全体最適”を具体化できるのも、他のSIerとは違う当社の強みだ。

-今後について。

今年度中にこれらのシステムの試作を完成し、2016年度末にサービスを提供する予定だ。物流業界では、定常的に人手不足が発生している。これまで当社が培ってきた経験と技術で造り出すロボットを用いて、それらの課題に対応していく。さらに、物流業界にとどまらず、広い分野でのロボット活用にも力を入れていきたい。

出典:オートメーション新聞 トーヨーカネツソリューションズ「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」採択 ピッキング自動化 異なるサイズ・形状も


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。