トヨタ式問題解決|元トヨタマンの目

トヨタ式問題解決|元トヨタマンの目

トヨタ式問題解決の特徴は、「目標設定」にある。

目標設定は、「必要性」のみを考えて決める。

そして設定された目標を達成すれば、その「必要性」がすべて解消されるほど高い目標でなくてはならない。

それもイジイジせず、ズバッと決める。

その際、「できるかどうか」は一切考えてはいけない。

 

それは次のような話からきている。

ジャスト・イン・タイムを実現させるためには、組立ラインの車両の流し方を種類別にバラバラに流さなければならない。

しかし、多くの前工程が段取り時間に2時間も3時間もかけていたら、まったく意味を成さない。

そこで、段取りで機械を停止する時間を圧倒的に短縮する必要性が生じた。

そしてトヨタのプレス現場が、血の出るような努力の結果、やっと1時間まで短縮した。

製造部長が喜び勇んで、そのことを大野氏に報告に行った。

そうすると大野氏は、「次は10分未満でできるようにしろ」と命令された。

まさに「必要性」のみからの目標設定が為されたわけだ。

しかしそんなものできるわけがない。

現場は途方に暮れた。

普通の会社なら「あほなこと言うな」とばかりに、いくらトップからのものでも、そんな目標は無視するだろう。

ところが、トヨタの愚直な現場は、それに真剣に取り組み、ついに実現してしまったのだ。

 

このようにトヨタは、未知なる目標に挑戦し続けてきた。

世間からは「トヨタは乾いたタオルをまだ絞る」と言われたが、それは世間の目標設定の仕方がトヨタほど未来をみていなかったことによる。

目標設定が甘いと、タオルには水分がないと見えてしまうのだ。

 

現在のトヨタは苦しんでいる。

問題山積で、問題解決を行なわなければならない。

しかし我々の時代にはきっちりできていたのだから、そこに戻るだけでいい。

未知なるものに挑戦する必要はなく、過去と現在の差を見つけ出して過去に戻すだけでいいのだ。

こんなの簡単だ。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。