トヨタ式問題解決手法

トヨタ式問題解決手法

トヨタはトヨタマンに対して一番最初に問題の発見を要求する。

トヨタは既に磐石な地盤の上に堅牢な石垣を積み上げ、その上に素晴らしい天守閣を築き上げている。

それにより世界一になろうとしている。

しかし、そのお城も時代の進行とともに必ず種々の問題が発生してくる。

トヨタマンには、その問題を見つけ出して、「トヨタ式問題解決手法」を使って、その問題が完全に解決するまで粘り強く(しつこくしつこく)遂行させる。

 

●トヨタ式問題解決手法・・・管理のサークルを何回も何回も回す

1.問題発見(1回目の管理のサークル)
2.目標設定
3.要因解析
4.対策立案
5.対策実施
6.効果確認・・・まだ目標値には至らない
7.問題再発見(2回目の管理のサークル)
8.再目標設定
9.要因解析
10.対策立案
11.対策実施
12.効果確認・・・まだ再目標値には至らない
13.問題再々発見(3回目の管理のサークル)
14.再々目標設定
15.要因解析
16.対策立案
17.対策実施
18.効果確認・・・まだ再々目標値には至らない






問題解決

 

●トヨタにおける「問題」の定義

①決まられた標準作業を守っていない行為
②トヨタ式変動予算管理で赤字が出た管理対象品

 

普通の会社は PLAN→DO→CHECK→ACTION と通常進めるが、トヨタの場合はなんとCHECK(問題の発見)からは入れるのだ。

トヨタの先輩達(私も入れて!)がすでに堅牢なお城を築城していて、そのお城の中に入るとすべての部分に「標準作業票」が掲げてあり、すべての品目に変動予算管理の網がかけてある。

誰でもが問題が分かるようにしてある。

 

●トヨタはこの問題解決手法を徹底的に教育する

新入社員には「新入社員の問題解決テーマ研究」なる課題が与えられ、各自に職場先輩があてがわれマンツーマンで指導が行なわれる。

半年後ぐらいに役員の前でA3用紙1枚にその内容をまとめて報告しなければならない。

仕事も何も分からない新人の内からこの洗礼があるわけだ。

そして毎年、1つのテーマ登録が行なわれて、これもA3用紙1枚にまとめさせられて発表しなければならない。

これにより当然人事評価が行なわれる。

また日常業務においても、すべてA3用紙1枚に内容をまとめて上司の決裁を受ける。

各事案の内容を的確にまとめることを徹底的に仕込まれる。

 

最近、トヨタの渡辺社長がパワーポイント禁止令を出したというニュースを聞いた。

これはA3用紙1枚にきちっとまとめて報告するというトヨタの企業文化が崩壊する危機感からだ。

パワーポイントだと細切れな情報が次から次へと目の前に展開され、一瞬分かったような気にさせれらるが、実はまったく分からない。

煙に巻かれて終わり、といった感じなのだ。

 

古いトヨタマンは渡辺社長とまったく同じ気持ちであり、彼の真意が痛いほど理解できる。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。