トヨタ式の根幹の考え方|元トヨタマンの目
「人偏のついた自働化」
1.せっかく自動化しても人を減らせない
<監視は閑視>
機械を自動化しても、機械故障や製品不良などが発生するような、いざという時のために、人が機械の側で監視している。
ある会社では1人が5台の自動機を担当していたそうだ。
この場合、機械のチェックは抜打検査的にしかできない。
”彼がちょうどその機械のところに行った時に故障が発生する”とか、あるいは
”彼がちょうどその機械のところに来た瞬間に不良が発生する”といったことはまずない。
彼は99%必要のないものを見ている。
結局、”人が機械の側で監視をしている”ということは、大部分”気休め”であって、監視の”監”は”閑”という字を当て嵌めた”閑視”というべきである。
われわれは「人がついている」ということだけで、なにか安心感を持っているようだが、それは「いろいろな検知手段よりも、人の方がより信頼度が高い」とでも考えているのだろうか。
せっかく自動化しておきながら、
「どうせ、人がついているのだから……」
という、無意識の甘えと心の緩みがないかよく反省してみることが必要だ。
2.せっかくライン化しても人が減らせない
ラインがチョコチョコ停止してしまい、その都度、人が対応している。
<チョコ停対策>
チョコ停は発生しても、作業者がちょっと手を加えればすぐに修正されてしまう。
それが問題を埋没させてしまうことになる。
単なるチョコ停でも、それがなぜ発生したかを徹底的に分析して真因を追究し対策を打つ姿勢が大切だ。
3.究極のあるべき姿
<正規のオートメーション>
装置そのものが”異常の検知”をして、しかも”装置自身が処置を行なう”という機能がなければならない。
GMはこれを目指して工場を新設したが、結局うまく動かずに失敗した。
4.現実的に目指すべき姿(落としどころ)
<プレ・オートメーション(人偏のついた自働化)>
装置そのものが”異常の検知”するが、”対応する処置は、人が行なう”
この考え方は新郷重夫氏が発案・提唱された。
したがってトヨタのオリジナルではない。
「ジャスト・イン・タイム」
トヨタのオリジナリティは、次の通り。
「1ヶ月間は毎日同じ生産を繰り返す(1ヶ月単位で生産量が増減する)」
「同一車種を固めて流さず、すべてバラバラにして流す」
「これによりすべての部品がバラバラのタイミングで必要になる」
「これにより時間当りでも、日当りでも部品ごとの必要数が同一になるため、納入便の定期便化が可能になる」
「ここまでできて初めてかんばんが回転する基盤ができる」
「かんばんは1ヶ月単位で必要枚数が変更される」
「生産の増減で要員も増減できる工程づくりをする(生産増→要員増。生産減→要員減)。このために人偏のついた自働化が必要になる」
「1ヶ月単位で生産が増減するのだから、必要要員数も1ヶ月単位で変更されるので要員異動を行なう」
「頻繁な要員異動が行なわれるため、作業はカンコツを廃し誰でもすぐできるようにしておき、さらに標準作業票を必ずつくる必要がある」
これらをひっくるめてトヨタでは「ジャスト・イン・タイムに部品が供給される状態」といっている。
ジャスト・イン・タイム・・・必要なタイミングでちょうど間に合う(早すぎず、遅くならず)
オン・タイム・・・必要なタイミングに間に合う(間に合いさえすれば、早すぎてもいいことになる・・・早すぎれば在庫に変わりない)
トヨタ式を説明していると、いろんなことがごちゃごちゃに絡み合ってくるため非常に説明がしにくい。
私は実務でやってきたため、”当たり前のこと”として頭に入ったが、外部の方が理解するのは難しいだろうなあと思う。