トヨタ工場の生産管理実務の難しさ|元トヨタマンの目
トヨタ生産方式において生産管理業務は非常に重要な位置を占める。
トヨタ生産方式の進展に伴って、生産管理業務はその内容を変化させなければならなかったし、生産管理業務自体も改善に次ぐ改善によりどんどんその内容を変化させてきた。
私はそれが大きく変化する以前のほとんどマニュアルの段階で、生産管理業務の実務を担当者として体験したため、電子かんばん化などで大きく変化した後でも管理職業務をこなすことができた。
電子かんばん化などによる生産管理業務の進化は、飛躍的な工数低減効果をもたらしたが、反面トラブル発生時には大混乱になってしまうことが多々あった。
マニュアルの時代には、ハンドリング工数はかかるが、異常については誰もが現場ですぐに気づくというメリットがあった。
しかし電子かんばん化などは現場から見るとブラックボックスの部分非常に多くなり一度トラブルが発生するとその規模が大きくなり、復旧にも多大な工数がかかるようになった。
しかしトヨタはこの新たなデメリットも一歩一歩克服してきた。
さて、この非常に複雑で難しい生産管理のデイリー業務については女性のパワーがそれを支えていると言っても過言ではない。
近所の高校を優秀な成績で卒業してきた人達が担当する。優秀な女子でも新人の子には、やはり難しいようで、職場先輩に叱られながらも半べそをかいて歯を食いしばってやって一人前になっていく。
ところが最近、トヨタでもご他聞に漏れず、人事政策で派遣社員が多く採用されるようになってきた。
しかし生産管理のようなネチッコイ仕事は、どうにも彼女等には受け入れられずすぐに辞めてしまう。
これには本当に参ってしまった。
さらに大卒男子は悲惨な状態だ。彼らも最初は実務を経験しなかればならない。
時には年下の女性に叱られながらも必死に覚えなければならない。
東京や名古屋のカッコいいビルに配属された同期を横目で見ながら、事務所では女の子に怒られ、現場へ行っても怒鳴られ実に可愛そうなものだ。
しかし私の部下には東大の法学部卒で進んで工場生産管理を希望して来た者もいた。
そう、このトヨタ工場の生産管理、原価管理部署が世界で最高のビジネスの教育機関なのだ。
せっかくトヨタに入ってもカッコいい都会のビルにいては、トヨタの真髄は習得できないような気がする。