トヨタマンの発想はやはりすごい!|元トヨタマンの目
トヨタ生産方式が始まって60年が経過した。
私はその創始から30年たってトヨタに入社した。
それからさらに30年が経過した。
この30年の工場の変化についてはすべて私の脳裏に鮮明に残っている。
この30年はIT化が極度に進化し、電子かんばん化など激しい変化があった。現在の工場を見ても、30年前の面影は微塵もない。
この私の脳裏にある変化の姿を、私は自分なりに本にまとめ出版したりしている。
トヨタ自体も、過去のいろいろな改善の変遷などを新しい世代に伝承していかなければならないというニーズを痛切に感じているようだ。
改善はやってしまえばラインは変更されてしまい、過去の実態は遠い宇宙の彼方へ飛んでいってしまう。
その改善を実施した人間がそこにいる間はいいが、どこかへ異動してしまったり、退職してしまったりすれば、変遷の歴史なんかはもう誰にも分からない。
トヨタはここに着目し、過去の歴史がいっぱい詰まった教育ラインを作ってしまったそうだ。
そのラインでは改善前の状態が再現されており、不良が発生するように作ってあるそうだ。
そこで実際に模擬作業をしてみると実際に不良ができてきて、それを目の当たりにできる。
「以前はこういう風なやり方をしていて不良ができてしまっていたんだ」
「それをこういう風に改善することにより克服したんだ」
というようなことが実際に体験できるのだそうだ。
そしてあるラインでは人形などを配置していて、受講生はそれらを徹底的に観察して悪い点を指摘しなければならない。
指摘できなければ、できるまでやらされる。
全世界のトヨタマンがそこへ呼ばれて研修を受けているそうだ。
このような教育施設は私の在職中にはなかった。
この話を聞いて、トヨタとは本当にすごいなと今さらながら思い知らされた。発想が実にユニークでいい。
ところで私はトヨタをやめていろいろな企業を見ることができた。
正直言って、トヨタ生産方式を完璧に理解・実践しているところは1つもなかった。
混流ラインなど生産工程はほぼ近い会社が1つあったが、生産性評価・問題解決手法までのトータルがトヨタ生産方式なのだから無理もない。
したがってトヨタ以外のすべての会社が、トヨタではすでにブラックボックスになってしまっている過去の部分から追体験する必要がある。
私も現在のトヨタほどユニークな方法はできないが、本にするという古典的な方法で協力していきたい。