トヨタもお客様は神様|元トヨタマンの目

トヨタもお客様は神様|元トヨタマンの目

自動車のような耐久消費財は、現在はすでに販売していない車でも、お客様は大切に今も乗っていただいているものも多い。

そのようなお客様の車が故障した場合、自動車メーカーはどんなに古い車種でも補修用の部品を供給しなければならない。

したがって自動車や自動車部品の工場は現在ラインオフする車の部品以外に、すでに販売を打切った車の補給部品も造りつづけている。

 

現在ラインオフする車の部品は後工程へ全て引き取られていくが、補給部品の方は機械加工などのいろいろな工程から「TOYOTA GENUINE PARTS」の化粧箱へ梱包され出荷される。

これも一ヶ月間の内示に基づき、ダンゴになることなく担当部署よりかんばんが振り出されてくるので、その納期に従って出荷する。

その納期遵守率は毎月各工場の製造部単位に算出され役員まで報告される。

 

もし読者の自動車が故障して、ディーラーへ持ち込んで「この部品は在庫がなく、トヨタの工場でつくらなくちゃならないので、これこれの期間かかっちゃいます」などと言われて、その期間がちょっと長かったらすぐ頭にきちゃうのではないだろうか。

したがって現在ラインオフする車の部品を滞りなく造ることは当たり前だが、補給部品についてもいい加減な対応をしていたら大変なことになる。

トヨタの社長はわれわれ社員から見れば神様のような存在だが、補給部品がなかなか届かないでいらいらして待ってみえるお客様にとってはただのオッサンでしかない。

 

ある時、生産管理室長が血相を変えて私のところへ飛んできた。

「おい青木、これこれの補給部品を大至急造らせろ、もう指示は出ていると思うが大至急だ。これを待っていたお客様からうちの社長の自宅に抗議の電話があったそうだ。おい大至急だぞ」

やはりトヨタにとってもお客様は神様なのだ。

 

読者もトヨタの車に乗っていて、もし不都合や不満などがあったらどしどし「お客様苦情センター(今なんと称しているか知らないが)」へ連絡して欲しい。

その情報は社長経由で各部署へすみやかに伝達される。各部署はいい加減な対応をしていると大変なことになるので一生懸命やっていた。

この一生懸命さが、良い品質を維持している原動力だと確信する。トヨタOBの私も今でもトヨタ車以外に乗る気はない。

 

読者にもぜひトヨタ車をお勧めしたい。

 

元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。