トヨタの製造課長|元トヨタマンの目

トヨタの製造課長|元トヨタマンの目

工場のすべての作業者のそばには、標準作業票が掲げてある。

それは班長や組長である監督者が作成し、管理者である課長が確認の印鑑を押している。

新人が来た場合、その標準作業票を見せながら、監督者が実際に作業を行う。

その上で、新人にやらせてみる。

管理者である課長はその場にはいないが、監督者が、何を、どのようにやらせているかはすべて把握しているわけだ。

だから、課長は「管理者」と言えるのだ。

 

トヨタを辞めて、いろいろな会社へ行っているが、標準作業があるにはあっても、それに課長の印鑑を押しているものには、出会ったことはない。

それどころか、標準作業などないところが多い。

そのような工場では、課長は作業内容まで立ち入っていないのだ。

結局現場任せ。いろんな現場とかセルで思い思いのやり方でやっている。

そのような会社の課長って、1日いったい何をしているのだろうか。

 

トヨタの課長は、時間があけば、常に現場へ出て、自分が指示した標準作業どおりやっているかチェックしている。

出来高、品質、安全、原価等々、現場の全責任が彼に集中する。

横でみていると、本当にカッコよかった。

 

私は事務屋だったが、やり直せることなら工学部を出て、トヨタの現場の課長を経験してみたかった。

 

P.S.

標準作業票を作れ作れといっても、工程がロット生産をしていて、1個流しをしていないような工場では、「標準」として作業を一本化させることはできない。

いろいろな作業が、五月雨的に襲ってくるからだ。

トヨタの標準作業とは、1個流しラインのきちっとした体制の上での話しだ。

それもトヨタは1ヶ月ごとに生産量や部品構成が変わるので、すべてのパターンの標準作業票を準備している。


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。