トヨタの製造課長|元トヨタマンの目
工場のすべての作業者のそばには、標準作業票が掲げてある。
それは班長や組長である監督者が作成し、管理者である課長が確認の印鑑を押している。
新人が来た場合、その標準作業票を見せながら、監督者が実際に作業を行う。
その上で、新人にやらせてみる。
管理者である課長はその場にはいないが、監督者が、何を、どのようにやらせているかはすべて把握しているわけだ。
だから、課長は「管理者」と言えるのだ。
トヨタを辞めて、いろいろな会社へ行っているが、標準作業があるにはあっても、それに課長の印鑑を押しているものには、出会ったことはない。
それどころか、標準作業などないところが多い。
そのような工場では、課長は作業内容まで立ち入っていないのだ。
結局現場任せ。いろんな現場とかセルで思い思いのやり方でやっている。
そのような会社の課長って、1日いったい何をしているのだろうか。
トヨタの課長は、時間があけば、常に現場へ出て、自分が指示した標準作業どおりやっているかチェックしている。
出来高、品質、安全、原価等々、現場の全責任が彼に集中する。
横でみていると、本当にカッコよかった。
私は事務屋だったが、やり直せることなら工学部を出て、トヨタの現場の課長を経験してみたかった。
P.S.
標準作業票を作れ作れといっても、工程がロット生産をしていて、1個流しをしていないような工場では、「標準」として作業を一本化させることはできない。
いろいろな作業が、五月雨的に襲ってくるからだ。
トヨタの標準作業とは、1個流しラインのきちっとした体制の上での話しだ。
それもトヨタは1ヶ月ごとに生産量や部品構成が変わるので、すべてのパターンの標準作業票を準備している。