トヨタの現場にはピラニアが泳いでいる|元トヨタマンの目
トヨタでこんな話を聞いた。
南米から観賞用の魚を船で日本まで輸送するのだが、どんなに水温などを調節していても、赤道を越える長旅のためか多くの魚が死んでしまったとのことだった。
そこで餌を十分に与えたピラニアを同じ水槽に入れて輸送することにした。そうすると観賞用の魚たちはいつ食われるか心配で緊張し続けるため、ほとんど死なずに日本まで来たそうだ。
トヨタの現場がまさにこの水槽内と同じ状況だ。
それではトヨタの現場のピラニアとはいったいなんだろうか。
それは「在庫ゼロの状態」だ。
トラブルを発生させれば即トヨタの長大なラインを止めてしまうことになり、何千人分のムダな労務費を払うことになってしまう。
この緊張感のため、トヨタマンは「設備が故障しないように常に予防保全をしておこう」「外注部品メーカーがチョンボしないようにフォローをしっかりしておこう」「作業者がミスしないようにポカよけを考えよう」といったように常に前向きに行動するようになる。
この緊張感が現場で最も重視しなければならない「安全」に大きく寄与するのだ。この緊張の糸が緩んだ所に魔の労働災害が襲い掛かるのだ。