トヨタの現地現物主義|元トヨタマンの目

トヨタの現地現物主義|元トヨタマンの目

トヨタの製造関係役員は毎月1回工場へ出向いて現場で2つの製造課の改善事例の報告を受ける。
「毎月なんて準備がたいへんだろう?」とお思いの方も多いかも知れない。しかしトヨタは巨大企業なので製造課の数は非常に多いので、1つの課にしてみると5,6年に1回、回ってくるごらいだろうか。
 
しかしそれが回ってきた時は大変だ。製造関係役員へ発表するのであるから、大掛かりで斬新な改善でなければ許されない。そのために、半年前からその製造課で「部課長自主研」活動がスタートする。工場の課長以上の管理職の中から、このメンバーが5名程度指名される。そして毎週火曜日の午後が自主研活動日に充てられる。
 
生産管理機能は改善活動に欠かせない。従って私は生産管理の課長だったため、よく指名を受けた。このメンバーになってしまうと、宿題は毎週持ち帰らなければならないし、結構土日なども出勤しなければならず非常に大変だった。
 
ところでトヨタでの改善活動を分類してみると次のようになる。

  • ①個人の改善活動(創意工夫提案制度)・・・投資はほとんどなし
  • ②グループでの改善活動(QC活動)・・・少しは投資あり
  • ③大掛かりな改善活動(部課長自主研活動)・・・大規模投資あり
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    このようにトヨタでは改善活動1つとっても、理にかなったきちっとした体制を構築している。特に、③の部課長自主研活動には「人」と「時間」と「金」を十分かけて製造課にとっては日頃できなかった大掛かり改善をするチャンスなのだ。そしてこの③の改善活動の発表会にはトヨタの全工場の部次長が参加する。良い発表はすべて盗んで横展させるためだ。
     
    トヨタを辞めて、いろいろな工場を見せていただいているが、大企業の場合、偉い方々は工場へあまり出向かれないようだ。そんなことではトヨタとの差はどんどん開いてしまう。
     
    元トヨタマンの目
     
    トヨタ生産コンサルティング株式会社


    豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。