トヨタの改善マンは一流の料理人たれ!|元トヨタマンの目
表題は私自身が自分に課した戒めだ。
30代の半ば頃だったか、工場での業務を通じた改善に自信がついてきて、日々改善のことばかり考えていた。
そんな頃、家に帰って冷蔵庫を開けると、なんとそこには多くの在庫があるではないか。それも長期不良在庫と言っていいものまである。
工場でどんなにいい改善を行なっても、自分の家の冷蔵庫がこんな状態では洒落にならない。当然すぐに女房にガミガミいうことになる。
しかしそのうち、女房との人間関係も良好ではなくなってしまう。
そこで改善マンを自認する私は考えた、「改善マンたるもの自ら率先して模範を示せなくては失格である」と。
そこで、前々から料理には興味があったので、ついに「男の料理」を始めることになった。そして目標を次のように掲げた。
①料理はおいしく
②献立の決定は、冷蔵庫に残っている材料を見て決める。そして足りないものを買出しに行く。
③厨房に入った以上、料理をつくるだけではなく、料理道具や食器の洗いものまですべて行ない完結させる。
④料理が余った場合、冷蔵庫で保管するが、必ず次の食事で食卓にならべ、そこで残れば捨てるようにする。自らつくり出したものは、最後までフォローしなければならない。
そして実際に料理をつくってみると、これがことのほか楽しかった。
自分が作ったものを自分で食べてみてそれがおいしいと感じたり、人が認めてくれたりする喜びがこんなに人間にとってうれしくなるものとは思わなかった。
それに冷蔵庫がカラカラの状態になり、まさに近所のスーパーが家庭の冷蔵庫代りといった状態にすることができた。
しかしながら、目標に「油分が少なくヘルシーな料理を追及する」というものがなかったためか、40代初めにはついに痛風を患ってしまいこの料理熱は急速に冷めてしまった。
家庭の厨房とはまさに最も身近にある「工場」であり、ものづくりや改善活動を毎日体験できる最良の場所だと思う。