トヨタの技術員の配属先|元トヨタマンの目
トヨタへ技術者として入社すると、「設計部」「生産技術部」「工場製造部技術員室」の3つのどれかへ配属される。
ほとんどの技術者が設計部を希望して、青雲の志を持って入社してくる。
したがって、配属言い渡しの日には、生産技術部への配属ならまだしも、工場製造部技術員室へ配属された者はがっくり肩を落として独身寮に帰ってきた。
しかしこの「工場製造部技術員室」がトヨタ生産方式実践の最前線である。
トヨタの工場は月次単位で生産が変動し、その変動に合せてラインを動かしたり、要員の配置を変更しなければならない。
また設備変更を伴なう改善は日常的に行なわれている。
これらは、当然、現場の製造課が主体となって行なうが、やはり大卒技術員の技術的サポートがどうしても必要になる。
この技術員室は製造課と同列で、室長は課長級で、製造部長の指示に従う。
この技術員室へ配属された技術者たちは、将来的には、製造課長、製造部長になる。
現場作業者からも製造課長、製造次長になる。
大卒……製造課長(正課長)……技術的な対応
現場……製造課長(副課長)……現場作業者の親分的存在
大卒……製造部長…………技術的な対応
現場……製造次長…………現場作業者の親分的存在
このような体制でトヨタ生産方式を実践している。
また新設ラインの設計、発注、施工はすべて「生産技術部」で行ない、「工場製造部」はまったくのユーザーだ。
当然、工場製造部はユーザーとして、新設ライン設計時には、多くの要望を生産技術部に出すことになる。
中国にある、日系中企業の工場で、工場技術員室の業務を中国人のK君がスタートさせた。
この企業は、規模的に小さいので、当然、今まで生産技術部も工場製造部技術員室もなかった。
今回、K君が非常に優秀なため、順調に滑り出した。
そこで副総経理のY.W.氏を「加工技術員室」室長(兼務)、K君を「加工技術員室」技術員とし、K君に現状業務を徹底的に遂行する体制を作ったらどうかと思って、Y.W.氏に提案してみた。
そうすると、Y.W.氏は「私は、現状では副総経理業務がすごくてもう死にそうです。だからもう新たな仕事をやる余裕は、物理的、精神的にありません」とのことだった。
中国人のS課長もしらないうちに、改善の仕事からいなくなり、Y.W.氏も初めはいっしょに改善の仕事をやってくれていたのに、しらないうちにいなくなってしまった。
まあ私も定住型のコンサルティングに変更し、私が汗を流すことで、多くの成果を得ることができた。
しかし私も2ヶ月に1週間しか訪問できない。
せっかくいい方向に動き出したのに、非常にもったいない。
やれCSだ、品質問題だと右往左往しても、結局は加工の原単位が明確になっていないと抜本的対応などできない。
この業務が進まない限り、どんな立派な管理業務や経営施策を行なっても、それは上滑りのものになってしまう。