トヨタの人事もスゴイ

トヨタの人事もスゴイ

トヨタは年功序列だ。

しかし相対評価し、昇格年に違いをつける。

早く昇格する人と遅く昇格する人が出てくる。

その相対評価は各人の「保有している能力」で順位づけする。

 

この評価とはまったく別個に、期間(1年間)での改善活動の頑張り度合いや達成度を評価する。

この結果で賞与の多寡を決める。

保有能力が低い評価でも、改善活動をがむしゃらに頑張れば賞与が多くなるのだ。

 

この評価を正確に行うために、期初に全ての社員に「重点テーマ」の登録を行わせる。

その「重点テーマ」の達成度と取組み姿勢を夏と冬に調査してその結果で賞与を支払う。

 

改善活動は、とにかく思いついたことを即座にやってみる。

そして失敗する。

失敗したら反省する。その原因を探る。

そして違う方法でやってみる。

そしてまた失敗する・・・・・・・・・・・・・・・・といったような失敗の連続だ。

だから失敗してもいい、「やったかどうか」を評価する・・・・・・・・という意味で「取組み姿勢」も大きく評価する。

 

保有能力が低い人でも、継続して一生懸命頑張れば、いずれ保有能力も付いてきて年功序列の順位評価も上がってくる。

 

またトヨタは、

「どうやって問題を解決したらいいのか?」

「どうやってその成果を報告したらいいのか?」

ということについて、徹底的に教育を行う。

 

トヨタマンの報告書は、ものすごく分かりやすい。

工販合併した時、旧販の課長が驚いていた。

このようなベースがあってこそ、重点テーマ制度や期間考課の独立性がきちっと保てるのだ。

 

またワーキングモデルという各職場のプロフェッショナルになるまでの成長イメージが書かれた一覧表がある。

さらに各職場ごとに専門知識・能力の業務別一覧表もある。

これを被考課者に見せて、保有能力の向上を促すとともに、評価の際の基準とする。

私が課長の時、このようなものを一杯作らされてめんどくさかったが、今、復習してみると、これらは必要不可欠な資料だと再認識させられた。

 

中国のある方に「トヨタの人事」についてセミナーを依頼されてまとめてみたが、トヨタは人事でも傑出している。

今更ながら驚かされる。

 

ちなみに、その中国の方へ次のような問題点の指摘を行った。

○人件費が安すぎ、設備投資意欲がなく、シーラカンスのような設備が多い。

そのため品質は向上せず、ライン化すらおぼつかない。

日本は人件費が世界一なので、省人化設備投資意欲が旺盛。

品質向上。

 

○終身雇用でなく、数年契約のため、失敗による成績不振を極度に恐れる。

したがって改善がまったく進まない。

ここが問題の深層かも……


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。