トヨタにはこんな重役もいた|元トヨタマンの目
改善活動とは実行してナンボだ。
実行するためには着想しなければならない。
着想には次の2つの方法がある。
①自分の独創で考える
②人のマネをする
当然①は大きく評価されるが、②についても劣らず評価する。
①は非常に大切だが、②によってそれを横展しなければ効果の拡大がはかれないからだ。
このためトヨタは毎月各工場持ち回りで2つの製造課が「現場改善発表会」を開催し、生産関係役員や各工場部次長が出席する。
「なにーー!? 毎月2つの課が発表!?」と、その頻度の多さに驚かれるかもしれない。
しかし心配はご無用だ。
トヨタは巨大企業で製造課など星の数ほどあるため、1つの製造課でみれば数年に1回まわって来るだけだ。
しかし発表の準備は極めて大変だ。
発表の半年前から、部課長自主研を発足させ、毎週火曜日の午後に活動を行なう。
当然予算もつける。
この機会に日常活動ではできない大型の改善を、会社が製造課に「人」「時間」「金」を確保してやり、実施させるわけだ。
現場は日常の生産活動だけでも必死にやらなければならない状態だ。それに対してトップがただ「改善しろ! 改善しろ!」ではできるわけがない。
これでは敵弾飛び交う中に、丸腰で突撃しろと言っているのに等しい。ちゃんと武器と作戦を与えて、その上でなければならないのだ。
トヨタではあれもやれ、これもやれと実にうるさい会社だったが、うるさく感じたのは私の個人的な能力がなかっただけで、今考えてみると決して無理難題をふっかけられたことはなかったように思う。
ところでこの毎月開催される「現場改善事例発表会」だが、これに出席する役員の中には、工場での実務経験のない人もいる。
ある調達担当役員で、そのような工場経験のない人がいた。
この役員は毎月、部下を発表工場へ出張させて事前に発表内容を確認させて、想定質問を考えさせていた。
そして発表当日はいち早くその質問をし、製造トップ役員に「俺はこんなに知っているんだ」ということをアピールするのだ。
私が入社したころの役員は、私から見れば「神様」ばかりだった。
会社規模が大きなるにつれ、このような首を傾げたくなるような人を見るようになった。
ちなみにこの調達担当の役員は日本で一番偏差値の高い大学の卒業生だった。