トヨタで教えられた先達の教訓33.34.35|元トヨタマンの目

トヨタで教えられた先達の教訓33.34.35|元トヨタマンの目

33.最後の決め手は自らの観察力と洞察力(豊田英二氏)
最近は技術のことでも経営のことでも、調べようと思うと多くの情報が得られる。
まさに情報の洪水といってもよい。
便利なことには違いないが、へたをすると、自分で努力して考える力を失うのではないかと思います。

問題を解決するのは、最後は自分自身であることを常に忘れてはなりません。
一方、試験機器にしても、まことに便利なものが入手できるようになり、手を下さずしてデータをとるようなことも比較的容易である。
しかし、かように手をかけなくてよくなった反面、自身の目と耳で直接観察し、苦労してデータをとるとか、数値に表れない微妙な現象を捉えようとする気概や能力が失われる恐れなしとはいえないのであります。

道具と言えば、せいぜい紙と鉛筆、算盤、計算尺くらいであった時代でも、現在でも、観察力とか洞察力とかが最後の決め手になることに変わりはないと信じます。
エンジンやキャブレターの一部の調子を良くする必要があった時、早速オシロスコープやストレーンゲージをそこにつなぐことを考える前に、エンジン全体とか自動車自体をもう一度よく観察して、次に部分の対策検討をするのが望ましい態度だと思います。

 

34.先入観にとらわれず、現象そのものをよく見る(豊田英二氏)
技術者は物をよく見るということが大切だ。
特に若い人達にとっては重要なことです。
また、実験をやるにしても、現象をよく見ることが必要です。
予想通りいくかどうか見るだけでなく、先入観にとらわれずに現象そのものをよく見ることが必要です。

 

35.解らない時は、解ったフリをするな(大野耐一氏)
現場に行ったら言い訳を鵜呑みにしていてはだめである。
説明を聞いてそれを納得してしまったら何も見えなくなる。
特に技術者はごまかされやすい。
日本人は解らないということをなかなか言わない。
納得してしまったら負けだ。
「解らん」ということを言えるようにならなければならない。
要するに常識から脱却することだ。
倉庫がないので倉庫が欲しいと言う。
だが、倉庫を設けると物を入れる。
すると倉庫番がいるだろう。
だから逆に倉庫が無くてもやれる方法を考えるというようなやり方だね。

 

元トヨタマンの目
トヨタ生産コンサルティング株式会社


豊田生産コンサルティング株式会社代表取締役社長◎略歴 昭和30年(1955) 愛知県豊橋市生まれ 昭和53年(1978) 早稲田大学商学部卒業トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社 平成16年(2004) トヨタの基幹職チャレンジ・キャリヤ制度(他社への転出支援制度)によりトヨタを退職(退職時資格は課長級) オーエスジー株式会社オーエスジープロダクションシステム推進本部副本部長就任 消耗性工具(ドリル・タップ・エンドミル)専門メーカーで自動車関連以外の業種の現場改善活動に従事。 平成19年(2007) 豊田生産コンサルティング株式会社設立◎トヨタでの職歴(26年)人事部人事課海外関係人事 3年/財務部経理課輸出入経理、国内債権債務管理 3年/本社工場工務部原価グループ鍛造工場能率・製造予算管理、工場棚卸総括 3年/本社工場工務部生産管理室車体・塗装・組立工場生産管理 4年/米州事業部原価企画グループ北米事業体原価管理、北米生産車原価企画 3年/田原工場工務部原価グループ成形工場能率・製造予算管理、トヨタ生産方式部課長自主研 2年/田原工場工務部生産管理室エンジン・鋳物工場生産管理、トヨタ生産方式部課長自主研 8年◎本社部門(人事・財務・原価企画)9年、工場部門(本社工場・田原工場)17年と本社機能、工場機能のそれぞれを幅広く経験。特に工場では生産管理と原価管理という「石垣」づくりとトヨタ生産方式自主研メンバーとして「天守閣」づくりの両方に長年従事。